イギリス紳士の魅力―『いつか晴れた日に』

どうしてイギリスの紳士というのはこんなに魅力的なんだろうか。

いつか晴れた日に』を観た。『プライドと偏見』と同様、ジェーン・オースティンが原作。19世紀イギリスの田舎を舞台に、家族や結婚をめぐる悩みを織り交ぜながら、姉妹の生き方を描いた1995年の作品。

本来であれば、物語の主役である姉(エマ・トンプソン)と妹(ケイト・ウィンスレット)について語るべきなんだろうが、どうしても、アラン・リックマンヒュー・グラントの二人に目が行ってしまう。

まず何よりも、アラン・リックマンの抑制された演技や、朗読する場面の美声にはうっとりせざるを得ない。『ハリーポッターと死の秘宝PartII』で見せたような「心の奥に秘めた愛と、常に変わらない誠実さ」を、この映画でも堪能することができる。アラン・リックマンのファンであれば、絶対に見逃せない作品だと思う(なぜか彼だけがパッケージ写真に顔が写っていないあたりに、なんとも不遇なものを感じるが)。

そして、ヒュー・グラント。にやけた二枚目的なイメージが定番だが、ここでの彼は内気だが芯の強い誠実な男。ギラギラしているばかりが2枚目ではないというイギリスの価値観を垣間見る思いがした。「王子様」がつねに白馬にまたがって登場するとは限らないのだ。ホンモノとニセモノは見かけだけではわからない(すぐに『ハリー・ポッター』に結びつけてしまい恐縮だが、ヒュー・グラントには『ハリー・ポッターと秘密の部屋』のロックハート先生を演じてほしかった)。

タイタニック』前のケイト・ウィンスレットをはじめとして、役者がいまよりもずいぶん若いことを除けば、映像もみずみずしく、古くなっていない映画だと思う。特に、19世紀のイギリスの田園風景は、当時の服装ともあいまって、眺めているだけで心が洗われるような思いがする。

ストーリー的には19世紀イギリス女流文学の定番の「身分」「結婚」が中心だが、波乱万丈の人間ドラマに、イギリスの田舎の美しい風景。そこに誠実なイギリス紳士。映画として完成度の高い作品になっていると思う。BD化が望まれる。その際は、ぜひアラン・リックマンをジャケット写真に加えてほしい。

いつか晴れた日に [DVD]

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