重すぎるくらい重い―『ウォッチメン』(コミック)

映画も重いが、コミックはもっと重い。
ウォッチメン』は「爽快」とは対極にある作品だが、世界について、人類について、そして自身の信念について再考させられる作品だ。

“金曜の夜、ニューヨークで一人の男が死んだ―”1985年、核戦争の危機が目前に迫る東西冷戦下のアメリカで、かつてのヒーローたちが次々と消されていた。これはヒーロー抹殺計画のはじまりなのか?
スーパーヒーローが実在する、もうひとつのアメリカ現代史を背景に、真の正義とは、世界の平和とは、人間が存在する意味とは何かを描いた不朽の名作。アメリカン・コミックスがたどり着いた頂点がここにある。
全ページ再カラーリングに加え、48ページにわたる豪華資料を収録した完全改訂版。SF文学の最高峰ヒューゴー賞をコミックとして唯一受賞し、タイム誌の長編小説ベスト100にも選ばれた、グラフィック・ノベルの最高傑作。

映画版ではスタイリッシュな映像と推進力のあるドラマが印象的だった。コミックの方もコマ割りのダイナミックさは斬新。ストーリーは映画よりも重層的で、何度読んでも味わいがある。そして、結末が問うものは、やはり重い。

「何を信じて何を守るべきか」という問題を考え抜けば、様々な価値観が対立することは十分に起こりうる。価値観の対立する複数のヒーローがお互いの信念を貫こうとすれば何が起こるか。そんな思考実験の結晶が、この『ウォッチメン』だ。ヒューゴー賞受賞もうなずける文学性。アメコミを馬鹿にしている人ほど読めば衝撃を受けると思う。

難点があるとすれば、本自体も実に重いので、持ち歩きに難渋することか。

なお、映画の感想は「正義」を担う「ヒーロー」を信じられるかー『ウォッチメン』 - Sharpのアンシャープ日記

WATCHMEN ウォッチメン(ケース付) (ShoPro Books)

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