『半分の月がのぼる空(6)』

タイトルとしては8巻まで出ているが、7巻・8巻はサイドストーリーの短編集なので、本編はこの6巻が最終巻。

以下、『半月』のネタバレを含みますが、「生と死」について考察しているので、よろしければお読みください。

結局、バッドエンドではない。里香はすぐに死ぬことはないが、あと10年もつかどうかだというのが主治医の見立て。だから、残された時間を裕一と里香は生きていく。もし里香が10年後に死ねば、裕一は28歳。主治医は、裕一に対して「愛しい人を亡くした世界で生きていくには微妙な年」だとか何とかいうが、僕に言わせれば28歳は十分に若い!

さて、では、実際の僕らの人生はどうだろうか。幸福な日々がずっと続いていくことも少ない一方、悲劇的な死で早期に終わることも少ないのだろう。言い換えれば、僕らは、生と死の間の不確実な状況を、日々生きている。そう、僕らの生死なんて、この世界の中では、確率論で語られてしまうものなんだ。

だけど、僕らに確率論で語り得ないものがあるとすれば、それは一人一人の「生」が固有のものであるということだろう。かけがえのない存在。僕って何? きみって何? 誰かの訃報に接したときに僕は思う。なぜそれは僕でないのだろうと。その答を探すとき、僕は考える。僕は自分の人生を生きるしかないのだと。たとえ苦しみながらでも、生きていくしかないのだと。そんなに簡単に決着なんかしない。それが人生なんだろうと。