生きる自由、死ぬ自由〜貞本エヴァ第11巻

前巻から1年3ヶ月ぶりの新刊。相変わらず高いクオリティを維持しているので、このペースは納得(美しいのは表紙だけではない)。

新世紀エヴァンゲリオン (11) (角川コミックス・エース (KCA12-11))

新世紀エヴァンゲリオン (11) (角川コミックス・エース (KCA12-11))

今回のハイライトはカヲル。登場から死まで駆け足だった原作と異なり、貞本エヴァでは、シンジとの交流と確執、そして最後の対峙までを丁寧に描いている。TVにあったような無駄にBL的な展開も一切なく、心の内面描写に力を注いでいて、さすがと唸らされた。

カヲルにとって自分の運命は既に決められている。そのような存在にとって、生とは何か。死とは何か。自由とは何か。もし生き様を選べないのであれば、死に様を選べばよい。ならば、愛する人の手の中で死にたい。そして長く記憶に留めてほしい。だが、そう願う者を僕らは本当に殺せるだろうか。殺した後でその喪失感と罪悪感を同時に受け止められるのだろうか。

ストーリーとしては、「最後のシ者」が倒され、ゼーレとネルフの直接対決が始まる。が、アスカは相変わらず精神崩壊して病室の中のままで、映画版のような唐突な弐号機の復活と破綻はなさそう。貞本エヴァのエンディングがなんとなく見えてきた。いずれにしても、次巻が待たれる(たぶん来年だろうけど)。