時をかける(かもしれない)少女―『マホロミ(2)』

建築っていいなと思わせる冬目景の『マホロミ』の最新刊。ほぼ1年振りの新刊、というのはまあ予定通りと言ってもいいんだろう。あらすじは以下。

真百合と出会い建物の記憶を視る能力に目覚めた土神。
大学で建築を学びながら建物たちの過去に触れるうちに、著名な建築士であった祖父の存在が気になり始める。
そんなある日、土神は学内の旧図書館で血痕の幻を目にする。
かつて死亡事故があったと噂されるその場所で、何があったのか・・・!?
生前は疎遠だった祖父との奇妙な縁が土神を新たな世界へと導いていく・・・

建築家を目指す主人公が、謎めいたヒロインと協力して謎を解く、というシリーズになんだろうな。きっと。超常現象の原因等はあまり説明されず。

「そんなんどうだっていいから、事件のせいにして、手をつなぎ合おう」とばかりに、建物の記憶を視るという大義名分の下で、手を握るとは、本当にけしからん。

それはそれとして、黒髪ロングの真百合が白いワンピースを着ている姿はたまらなく幻想的だ。表紙の雰囲気からして、彼女が実は時空を越えているのではないかと思わせる。実際にはそんなことはないのだろうけど、彼女の正体は何者なんだろうとあれこれ想像させられる。

冬目景の作品には、とびきりの善人も出てこないし、とびきりの悪人も出てこない。それでいて、何を考えているのか分からない人ばかりで、どことなく不穏な空気が流れている。それゆえに先の展開が読みにくい。これは時に欠点となり、時に長所となる。

この巻のように一つの事件を何話かかけて解決していくという『マホロミ』の構成は、この作者のスタイルに合っていると思う。次は一年後になるかとしれないが、今後が楽しみな作品だ。

マホロミ 2: 時空建築幻視譚 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)

マホロミ 2: 時空建築幻視譚 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)