『閃光のハサウェイ』(2021年、村瀬修功監督)

機動戦士ガンダムUC』の映画が完結を迎えた2018年11月、次の宇宙世紀モノとして3部作での製作が発表された『閃光のハサウェイ』。

富野由悠季による原作小説は、小説『逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』の続編として発表されたが、映画の方は映画『逆襲のシャア』の続編である。ということで、登場人物の人間関係や出来事が異なっているため、小説と全く同じ世界線にいるわけではない作品である。

折りからのコロナ禍に加え、東京都の緊急事態宣言の慢性化、さらには都知事による映画館への営業自粛要請などもあり、ようやくこの6月11日に公開に漕ぎ着けた。

まさに「満を持して」の公開である。

劇場数や座席数が絞られていること、来場者のみが購入できる限定BDやプラモデルに”転売ヤー”が群がったこともあり、初日・二日目のチケットは入手困難だったが、三日目の今日ようやく鑑賞することができた。

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冒頭15分の映像が先行して無料公開されているが、作画、音声とも20年代クオリティ。

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歴代の宇宙世紀モノのガンダムと比べると、飛び抜けて映像が美しく、声優の演技にも深みがあり、そして大人の鑑賞にも耐えられる話運びとなっている。

全95分のクオリティは、この冒頭15分を軽々と超えてくると言って良い。

そして、宇宙世紀シリーズを貫く“持てるものvs持てぬもの”という政治思想がテーマ。

人口爆発から宇宙に植民をおこなった人類の中で燻る「なおも地球にとどまる特権階級」と「平等に近付けようと警鐘を鳴らす活動家」の対立。

前作『逆襲のシャア』で、アムロとシャアの生き様・死に様を否応なく見せつけられ、その戦いの中で心惹かれた少女クェスを喪失したハサウェイ。

どこか老成したように見えるハサウェイだが、謎の少女ギギ・アンダルシアと出会って心通わせ合い始めることで、熱い部分が表に出てくる。

政治思想を語るときにはクールなのに、いざガンダムに乗り込んでモビルスーツパイロットとなるとクラクラするようなバトルを繰り広げるという緩急はまさに宇宙世紀世代のファン待望のもの。

原作小説の発表された当時と比べても、民主主義の閉塞感が世界を覆い、「分断」が叫ばれ、停滞の打破を待望する空気に満ちている2020年代の今の方が、この作品を受け入れる余地は高くなっているかもしれない。

『ジョーカー』のようなアンチヒーローが熱狂的に支持される時代が来ることを御大は果たして想定していたかどうかわからないが、ある意味で、時代が富野由悠季に追いついた感さえある。

そしてまさにその点で、ハサウェイが原作と同じような運命を辿るかどうか予断を許さないとさえ思える。

反逆者が処刑されてしまえば、それは一気に殉教者として英雄になってしまうのだから。

今年見るべき、そして続編が楽しみなアニメ映画の筆頭格に躍り出た『閃光のハサウェイ』。

公開から5週間は週替わりで歴代ガンダム映画のフィルムももらえる。

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初週の今日はファーストガンダム

この後、Z、逆シャア、UC、オリジンと続くのかな。

また観に行ってしまいそう。毎週。