ピーター・ライト版『コッペリア』(スターダンサーズ・バレエ団)@テアトロ・ジーリオ・ショウワ

スターダンサーズ・バレエ団のピーター・ライト版『コッペリア』を観に、新百合ヶ丘のテアトロ・ジーリオ・ショウワまで。

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昨年はコロナ禍で中止、先月はスエズ運河のコンテナ船の座礁で衣装が届かずに延期、ということで、ようやく今日の初日を迎えた。

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観客の半分近くは保護者に引率されたバレエ少女という感じで、そうした客層に向けて総監督・小山久美によるプレトークが用意され、この舞台の背景が語られる。

幕が上がると、そこは中世から近世のヨーロッパ。

イギリスから衣装、舞台装置、小道具を持ってきただけあって、ステージはそこはかとなくクラシカルで幻想的な雰囲気。

誤解を恐れず言えば、日本ではなくヨーロッパの伝統ある劇場に入ったよう。

こうした雰囲気のおかげで、「人形に命を吹き込む」という独特の世界観の中にすっと入っていくことができた。

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初日のキャスティングだが、出てくる女の子たちとキスしまくりの調子いいイケメン感全開のフランツ池田武志。コミカルな演技で笑いを誘いつつあざとかわいく優雅に舞うスワニルダ渡辺恭子

この二人がメインであることには疑いないが、個人的にもっとも感銘を受けたのは、少女人形を作ったり、謎の実験をしたりして皆から変わり者として扱われる老人コッペリウスを演じた鴻巣明史。

おかしなところを強調するばかりではなく、内面には純粋なファンタジーを抱いているさまが全身で演じられ、どこからどうみても「愛すべきヤバいマッドサイエンティスト爺さん」にしか見えなかった(褒めてます)。

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先日無料配信された新国立のプティ版とどうしても比べてしまうが、プティ版の方が最後にコッペリウスが救われずに罰を受けるかのように終わり、「不思議な体験の末に主役二人が仲の良さを取り戻す」という点が強調されてる感じがあるのに対して、こちらの方はコッペリウスも彼の望んでいた夢を見るようなファンタジーで終わる。

第三幕に古典的な冗長さはあるが、後味はこちらが抜群に良い。誰もがハッピーエンド。

終演後に衣装や小道具を舞台裏に見学に行くツアーも開催され、できれば観たくもあったが、このご時世人数に制限ありということで、そちらは若い世代に委ねることとした。

やっぱりバレエは、演者も大事だが、演者を引き立たせる衣装、舞台装置もとても大事だと思わずにはいられなかった。