現代日本文学の俯瞰―佐々木 敦『ニッポンの文学』

『ニッポンの思想』『ニッポンの文学』に続く佐々木敦の『ニッポンの…』シリーズ第三弾は「文学」。

村上春樹から西尾維新あたりまでの現代日本の文学をクロニクルに辿る「解説書」。

その中でいわゆる「純文学」が、SF、ミステリ、ライトノベルサブカルチャーなどと近接して融合していくという大きなうねりを描いている。

個人的には、各作家に関する記述を通して、日本の社会史なり風俗史なり思想史が浮かび上がるようなものを期待していたが、どちらかと言えば、手堅いハンドブック的な構成になっているように感じた。

主観的な熱い想いが迸るようなものを期待していたが、その辺の筆致は抑え気味にしたのかなあという感想。

それでも、伊藤計劃の構想を円城塔が引き継いで完成させた『屍者の帝国』あたりの記述には力が入っているように思えたけどね。全編このくらいの熱さならなお面白かったかなと思う。

まあ、80年代くらいからの作家を同時代的に読んで来た人には目新しさはないかと思うが、そうではない人がジャンルや年代を俯瞰するには有益な本かもしれない。