「バルテュス最後の写真―密室の対話」展を見てきた。
(公式サイト):「バルテュス最後の写真—密室の対話」展|三菱一号館美術館
晩年のバルテュスは、絵筆も鉛筆も満足に扱うことができなかったが、それでも、少女の中に「永遠の美」を求めるというアーティストとしてのライフワークは続けていた。
かれは、筆をポラロイドカメラに持ち替えて、近所に住むアンナを撮影していた。1992年から2000年までの間。最初の撮影はアンナが8歳のときだった。この展覧会では、節子夫人が保管しているポラロイド160点余りを展示している。
同じようなアングルのカットが並んでいる。手ブレやピンボケも多い。中には、ポラロイド特有の色被りや退色も見られる。
似たようなアングルで執拗に連写しているのを眺めていると、微妙な角度や光線の違いによって、少女の存在がわずかに息づいているかのように感じられる。
バルテュスが狙ったのは、疑似動画的な効果なのか、それとも「奇跡の一枚」なのか、いまとなっては分からない。
だが、連続したカットから見えてくるのは、自らの命のある限り、絶対的な美を追求しようとする彼の執念だ。
節子夫人は本当にこの貴重な作品をよく保管していたと思うし、これを観ることができるというのは僥倖だと思う。
展覧会は三菱一号館美術館で9月7日まで。