京フェス2013のこと

京都SFフェスティバル2013に行ってきた。今年の本会はこんな内容。

最初の円城塔福永信のパート「小説とコミュニケーション」は、対談、筆談、そしてバックグラウンドで流す画像という3層構造のコミュニケーション。重層的というか、マルチタスク型。一歩間違うととりめとなくなりそうなところを、同い年の作家同士という共通点により、かなり素の顔を出したものになっていた。関わり方の違うこそあれ、二人にとって、筒井康隆の存在が大きいというのがよく分かった。筆談のメモは、終了後にコピーされて出席者に配布されたが、授業中にこっそりと回す手紙のような味わいだった。

続く小川一水掘骨砕三のパート「SFの中のセックス、セックスの中のSF」は、SF作家の小川とエロ漫画家の掘骨の異色対談になる、という狙いだったと思われる。が、SFにも造詣が深くトークも上手い掘骨に対して、自分の中に入っていく「作家気質」の小川では、なかなか盛り上がらず。最後の会場からの質問で「何にエロを感じるか」に対して「4重構造の女の子」と小川が答えたところだけは「お?」と思ったけど、他はほぼ掘骨の独壇場だった。

昼食を挟んで始まった「近未来都市SFのフロンティア」は、本日のメイン。吉上亮、籘真千歳という二人の売れっ子作家に、急遽代役で司会を引き受けた早川書房の井手聡司が絶妙の合いの手を入れる。籘真が「スワロイテイル」シリーズで描いた近未来の東京が、実は沖縄にインスパイアされているとか、吉上がデビューする前の話として、東浩紀に習作を見せたり、ライトノベルの賞に応募したりしていたというエピソードが聞けた。若い吉上の方が「空気を読んだ」トークを見せていたが、個人的には自分の想いを朴訥な語り口で伝えようとする籘真の言葉にかなりの感銘を受けた。

最後は、『たんぽぽ娘』を最後に完結した「奇想シリーズ」にまつわる裏話を中村、大森が語るというもの。二人ともこの業界では重鎮と呼ぶべき存在で、次から次に固有名詞がポンポンと出てくる密度の濃いトーク。だが、やや内輪受け的な雰囲気があるところと、自分の話よりも、ここにいない編集者や関係者のことを語るのを聞いていると、だんだん居心地の悪い感じになってきた。出版業界の対談というのは、えてしてそういうものなのかもしれないけど。

ということで、京都での滞在の大半を京フェスに費やしたが、それなりに面白かった。参加者は男性が多かったが、「今日の早川さん」に出てきそうな女性も大勢来ていて、このジャンルが盛り上がっていることを思わせた。

写真は、昼休みに撮ったもの。丸太町からの鴨川の眺め。やっぱりいいね、京都。
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(PHOTO:シャープ、CAMERA:OLYMPUS XZ-1、アートフィルター「ジオラマ」使用)