敵役登場―『スター・トレックII カーンの逆襲』

Iで世界観と主要人物を紹介し、IIで悪役を登場させて戦わせる―

J・J・エイブラムスは『スター・トレック』シリーズの熱心なファンではなかったそうだが、劇場版第1作を映画館で鑑賞していた。であれば、二作目の『スタートレックII カーンの逆襲』でクールな敵役が出現することを知っていてもおかしくない。

IIで登場するカーンは、テレビシリーズで人気を博した敵役。もっとも、僕自身テレビシリーズを知らないのであるが、Wikipediaから抜粋すると、以下の通り。

頭脳・身体能力共に優秀である。性格は、傲慢で狡猾。他者に対して非常に高圧的だが、それに見合う統率力とカリスマ性を持っている。

なるほど。これは人気を博したんだろうな。いま見ると、グラムロックにかぶれた痛いオヤジに見えてしまうのであるが。まあ、これも時代というやつだろう。

そんな「クールな敵役」を、現在の基準で選ぶとなれば、これはもう『シャーロック』のベネディクト・カンバーバッチ以外には考えられないということになるのだろう。

さて、この『スタートレックII カーンの逆襲』について言えば、冒頭の「コバヤシ丸」シミュレーションから始まり、秘密の「ジェネシス計画」を経て、カーンとの知力・体力を賭けた死闘と、最後の最後まで見どころ満載。登場人物の間の掛け合いも軽妙で、キャラクターの雰囲気は前作よりも出ている。上映時間も113分と前作よりだいぶ短くなり、テンポが良くなっている。CGのレベルも大幅にアップした(後にピクサーの創立メンバーとなったチームが担当)。

総じて、『スター・トレック』シリーズの代表的な作品になりうると思う。が、唯一残念なのは、クライマックスで某主要人物を××してしまっているところ。その後、2作かけてストーリー上修復を図るのだが、まどろっこしいこと極まりない。主要人物を××して、その後○○というのは、日本の少年コミックの独壇場かと思いきや、案外、その原点はここにあるのかもしれない。だが、事後的にすべてを知っている視点からすると、興醒めだと言わざるを得ない。

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