スポックのスポックによる―『スター・トレックIII ミスター・スポックを探せ!』

スポックのスポックによるスポックファンのための映画。それが『スター・トレックIII ミスター・スポックを探せ!』である。

前作『スター・トレックII カーンの逆襲』の最後でスポックがあんなことになってしまった。それを受けて、スポックを演じているレナード・ニモイが自らメガホンを取って、文字通り「スポックを探す」物語を作り出した。名前は出ていないが、脚本にも関わっているとのこと。クリント・イーストウッド並の八面六臂の活躍だ。

だが、作品の語り口の方は、イーストウッドほど巧みではない。スポックを探すために、カーク達はエンタープライズ号に乗り込み、ジェネシス星に向かうのだが、どうにも爽快感のない展開が続く。カークの息子のデビッド・マーカスの描かれ方も不憫だし、スポックを発見してからの展開も、あまりにオカルト的な演出で、ちょっと薄気味悪い。

ところどころで映像と音楽がマッチしていないと感じる場面があり、どうにも映画の世界に入っていけなかった。俳優としてのニモイは非常に渋くて円熟した演技を見せてくれるのだが、監督としてのニモイはまだまだ青いということだろう。

結果的にこの作品だけでは「大団円」とはならず、次作の『スタートレックIV 故郷への長い道』まで合わせて、II,III,IVで三部作という扱いになっている。そして、多くの三部作にありがちなことではあるが、真ん中の作品(すなわち本作)が「つなぎ的」で「中途半端」な性格になっていることは否めない。

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