これが民放TVドラマの限界か―『絶対零度 特殊犯罪潜入捜査』

台風接近で早く帰宅したので『絶対零度 特殊犯罪潜入捜査』なるTVドラマの最終回をリアルタイムで観る。

タイトルの通り、潜入捜査によって知能犯の裏を書く捜査を売り物にする作品で、コンセプトとしては頭脳派のはず。だが、どう見ても犯人に裏をかかれっぱなしで、上戸彩が疾走する肉体派な場面ばかりが印象に残った(最終回以外は違ったのかもしれないが)。

ボスキャラの木幡なる人物を演じていたのはユースケ・サンタマリア。一見普通なのに何を考えているのか分からない不気味さを醸し出していて、彼の役者としての力量を感じることができた。だが、いかんせん、脚本と演出が中途半端。このような知的愉快犯ということでは、どうしても『ダークナイト』のジョーカーと比べてしまうのだが、狂気とか凶悪性において、スケールが小さくまとまりすぎ。

ピエロの扮装に対して「スケキヨ」マスクというのはユニークなアイデアだが、マスクを着けていないときのインパクトが弱い。また、ミスディレクションで捜査員を別の場所に集めておきながら、単に「空振り」させるというのも、「怖さ」を今ひとつにしている(ジョーカーなら警察が集まる頃を見計らってセットしておいた時限爆弾で吹っ飛ばしているだろう)。最後に捕まったときに「もう飽きた」みたいなことを言うのもキャラとして一貫性がないと思った。

凶暴や狂気を前面に出すのは「TVドラマ」という枠組みでは厳しいのかもしれない。だが、ユースケは和製ヒース・レジャーとなれるくらいの不気味な存在感を持った俳優だと思う。その点をもっと引き出せたかもしれないと思うと残念だ。続編を作るにもスポンサーの顔色を見ずにはいられない。これが民放TVドラマの表現の限界なのかもしれない。