『マルドゥック・スクランブル完全版』の第二巻。前巻のクライマックスは銃撃戦だったが、今巻のクライマックスはまったく別の展開へ。以下ネタバレ。
少女は戦うことを選択した。
人工皮膚をまとい、高度な電子干渉能力を得て再生したバロットにとって、ボイルドが放った5人の襲撃者も敵ではなかった。
ウフコックが変身した銃を手に、驚異的な空間認識力と正確無比な射撃で次々に相手を仕留めていくバロット。
しかしその表情には強大な力への陶酔があった。
やがて濫用されたウフコックが彼女の手から乖離した刹那、ボイルドの圧倒的な銃撃が眼前に迫る。
舞台はカジノに変わる。だが、ここで繰り広げられるのは、単なる金儲けの話ではない。「生きる」ことは「勝つ」ことであり「存在を示す」ことでもある。もちろん誰もが常に「勝つ」わけではない。「勝ち」を狙って自らの能力を駆使し、他人と競い合うことによって自らの道を認めさせることができれば、たとえ結果的に敗れても、それが「生きる」ということだ。バロットはそのことを学ぶ。スロットを通じて、あるいは、ルーレットやカードを通じて。
冲方丁は銃撃戦のバトルだけではなく、カジノのバトルを描いても抜群にスリリングだ。こんなに面白い小説とは思わなかった。このパートを映画化するのは難しい気もするけれど。
マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 冲方丁
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/10/08
- メディア: 文庫
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