20代終盤のリアリティ〜『にこたま(1)』

渡辺ペコの最新作『にこたま(1)』を読んだ。軽くネタバレ。

にこたま(1) (モーニングKC)

にこたま(1) (モーニングKC)

前作『ラウンダバウト』の中学生の世界からぐっと年齢が上がり、主要人物は30歳手前の社会人。中学生は痛かったり可愛かったりしたが、大人の世界は醜くてそして切実だ。だが、僕らが生きている世界はまさにこうなっている。そして、20代終盤の頃の妙な焦りや高揚や諦めを、リアルに描いている。「最後の思春期、ゆらぐゆらめく第三次性徴白書! 」ということだ。第三次性徴ってなんか恥ずかしいな。もうずいぶん前に忘れてしまったけれども。

この作品の主人公は交際9年・同棲5年の浅尾温子(あっちゃん)と岩城晃平(コーへー)。コーヘーが職場の先輩を妊娠させてしまい、そのことをあっちゃんに伝えるところがこの巻のクライマックス。いわゆる修羅場。決して綺麗ごとでは済まないし、かといって、絵に描いたようなバトルが始まるわけではない。だって人間だもの。

最近、このような等身大で、かつ救われないマンガが支持されているような気がするが、この作品もやはり救われない方向に向かうのだろうか。来月第2巻が出るようだ。『ラウンダバウト』より暗くて不健全ではあるけれども、リアリティとユーモアは渡辺ペコならでは。引き続き注目していきたい。