冲方丁の代表作『マルドゥック・スクランブル』が劇場公開を控えて完全版が出たので、読み始めた。ハヤカワの公式サイトによる紹介は以下の通り。
賭博師シェルの奸計により、少女娼婦バロットは爆炎にのまれた。
瀕死の彼女を救ったのは、委任事件担当官にして万能兵器のネズミ、ウフコックだった。
法的に禁止された科学技術の使用が許可されるスクランブル−09。
この緊急法令で蘇ったバロットはシェルの犯罪を追うが、そこに敵の担当官ボイルドが立ち塞がる。
それはかつてウフコックを濫用し、殺戮の限りを尽くした男だった。
代表作の完全改稿版、始動!
これ、すごく面白い。全3巻の1巻を読んだだけなのに、もう夢中。設定なんかはサイバーSFの王道。そして『ガンスリンガー・ガール』にも似た設定なんだけど、あちらが救われなさが根底に漂っているのに対して、こちらはどこかしらポジティブな明るさがある。良質なエンタテインメントだ。
文章も上手い。情景が目に浮かぶし、キャラも立っている。バトルも熱い。ライトノベルと比べちゃいけなんだろうけど、テンポがよくって味わいがある。緩急の使い分けが上手く、読んでいてすっと世界に引き込まれる。巧いね。
本屋対象と吉川英治文学新人賞を受賞した『天地明察』は時代小説だけど、この文体なら時代小説でもエンタテインメントとして楽しく読めそうだ。
マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 冲方丁
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/10/08
- メディア: 文庫
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