終わりの始まり〜『GUNSLINGER GIRL(11)』

初期の「少女+銃=萌え」というコンセプトからは相当遠くまで来てしまったGUNSLINGER GIRLの最新刊。もう11巻、という感じもするし、ようやく11巻という感じもする。考えてみれば、前巻からは9ヶ月経っているのだ。以下、ネタバレ。

GUNSLINGER GIRL 11 (電撃コミックス)

GUNSLINGER GIRL 11 (電撃コミックス)

公社あるいは義体の功罪。そこには正義もない。善もない。あるのは冷徹な打算と独善だけだ。少女達、いや違った、義体はその犠牲者である。そして指導官・フラテッロも、ある意味では被害者なのかもしれない。

今回は、宿敵・ジャコモ=ダンテが狂信的なテロ行為を行う。それに立ち向かう公社。そして義体の少女達。何のために戦うのかは人それぞれだ。いまだに「条件付け」のために「ジョゼさんにほめられるために」戦うヘンリエッタ。一方で、「生き残るために戦う」というまるで人間のようなトリエラ。

激闘の末、ベアトリーチェが命を落とす。ダンテに対峙するのがベアトリーチェというのは、どこの『神曲』だよという感じだ。そして、その死に方も、物語的に壮絶ではあるが、アンジェリカのときと比べるとなんだかあっけなく、相田裕のこのキャラに対する愛情の薄さみたいなものを感じた(まあ、もともと印象の薄いキャラではあったけど)。いずれにしても、これでまた一期生が一人減った。

残る一期生は、ヘンリエッタ、リコ、トリエラ、クラエスの4名。クラエスは前線に出ていないのでいずれかの段階で自らの機能上の寿命を迎えるのだろう。そして、人間らしくなってきたトリエラは、義体として最後を迎えるのかどうか分からなくなってきた。

ということで、次はヘンリエッタ、リコの行く末に焦点が当たることになるだろう。そのためには、ジャンとジョゼの兄弟の原罪がきちんと描かれなくてはならないし、彼らの亡き妹であるエンリカの物語が始まるのは必然である。ジャンとジョゼはどのようにして極度の、ロリコン、いやシスコンになってしまったのか、と。次巻はそういう展開になるはずである。いよいよ、終盤に向けて物語は大きく旋回し始めた。「終わりの始まり」というべきか。

蛇足だが、絵柄がずいぶん変わった。これまで静的であったのが、ずいぶんと動的に。なんだか青年誌(非ヲタ向けの)かと思った。あと、ヘンリエッタのメンテナンスの場面で、水着を着用しているのが、なんとなく時代の要請っぽいなと感じた。