GRAPEVINEの2005年ツアーsweet home adabanaのDVDがアマゾンから届いた。これは、昨年のファイナルライブ(Sharpのライブレポ)の出来があまりによかったので、ファンや関係者の強い要望を受けて急遽発売に踏み切ったものだということだ。だから、ライブDVDとしてそんなに凝ったものではない。しかし、ものすごく感動的な内容だ。
- アーティスト: GRAPEVINE
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2006/04/05
- メディア: DVD
- 購入: 1人 クリック: 10回
- この商品を含むブログ (37件) を見る
サポート・ベーシストの金戸はの2006年4月7日付エントリーでこう言っている。
歌にギターが絡み付いていく感じや演奏のうねりが上手い具合に表現されていた。
そう、まさにそうなんだよ。ということで、DVDインプレ。
最新アルバム『deracine』と同じく「13/0.9」で始まるが、そこからM2「Reverb」(テンポかなり速め)、M3「シスター」、M4「いけすかない」と畳み掛けるようにVINEワールドを展開。立ち上がりからただただ圧倒される。
ここで最初のMC。「お台場イェイ!ZEPP東京イェイ!そして最終日イェイ!」と盛り上げてしばらく語ったあと、「もうオレは感動で少しヤバイです」と語る田中。
MC後はしっとり系にチェンジ。M5「少年」の最初のサビで、田中が歌詞を間違える。これもそのまま収録されている。MCの「感動で少しヤバイ」というのは、リップサービスじゃなくて本当だったんだ。歌いながら涙を流す田中和将の姿を見る自分の頬にも、涙が伝っている。もう僕も感動で少しヤバイです。
しっとりとした雰囲気を高めながら、M6「それを魔法と呼ぶのなら」、M7「放浪フリーク」と『deracine』バラード・ポップ系の怒涛の展開。「放浪フリーク」を歌う田中の姿のなんと気持ちよさそうなこと。
ここで「大江戸ロックンロール!」と叫んで、ここから少しロック色の強いナンバーへ。M8「Metamorphose」で社会や現実に対する違和感を表明し、M9「REW」で名状しがたい徒労感や喪失感を歌い、M10「豚の皿」では独裁権力が行うエゴイスティックな不正義を糾弾し、M11「VIRUS」では軽薄な世相や流行を皮肉る。
これらのナンバーは、音楽的にはロックンロールの一言で括れないほどバラバラだが、根底に「怒り」や「反抗心」を抱えている。だから、これらは「ロック」なのだ。圧巻は、13分のロングバージョンとなったM12「KINGDOM COME」。王様のお出ましだ!敬礼だ! でも、王様は裸なんだよ。そして、王国はもう衰退している。そして、やがて没落する。だって、こんな筆舌も尽くせない一斉動員をしているんだから。
ここからアップテンポなナンバーへ。M13「ポリゴンのクライスト」、そして「O・DA・I・BA!違う、A・DA・BA・NA!」というシャウトを挟んで、M14「アダバナ」で会場の盛り上がりはピークに。M15「アンチ・ハレルヤ」では、歌詞を「憧れてたダイバ」に替えるサービスぶり。続いて、ちょっと懐かしいミドルテンポのロックM16「lamb」でテンポダウンし、その直後に、GRAPEVINE史上最速ナンバーM17「その未来」。前曲のテンポとのギャップもあって、速い速い。まるで別のバンドのよう(笑)。そして、「ありがとう!じゃラスト!」と田中が大声を張り上げて、M18「GRAVEYARD」へ。大団円の雰囲気を持つ「GRAVEYARD」をラストに持ってきたこの日のセットリストは、実に上手いなと改めて感じる。
ここでアンコール。最終日ということでスペシャルゲストのつじあやのが登場。M19「スカイライン」のコーラスに参加。女性コーラス版の「スカイライン」は想像以上に綺麗。余談ながら、つじあやのの持っている魚の形のタンバリンはかわいい。
そして二回目のアンコール。「じゃなつかシングル!」と田中が呟いて、照明が消える。イントロが静かに始まる。なんと「光について」。観客席から「キャー」とか「ウォー」というどよめきが起きる。歌が始まっても照明はほとんど点かない。弱いバックライトのみ。ほとんど暗闇の中のステージ。サビで「光に満たされてゆくこの世界の中 何をしていられた?」と歌っているときにも、光に満たされないまま。でも、歌の世界の中に入るという意味では、この演出は最高だったと思う。
ニ回目のアンコールの最後は「Everyman, everywhere」。ちなみに、照明、まだ暗いまま。サビで弱めのスポットライトが田中の顔を照らすと、またしても頬に涙が流れているように見える。「いつか叶うようにと どの面下げて言うのだろう」
そうなんだ。建前とか社交辞令とかキレイゴトとか、そんな嘘はいらない。
盛り上がるところは盛り上がり、泣くところは泣く最高のライブ。最後の最後に田中のサービスショットあり。おすすめの逸品。