映画『バクマン。』ーすっきりとした秀作

「〜マン」の実写版には気をつけろ、というのが僕の中にあって、それは『デビルマン』だったり『ガッチャマン』だったりするわけだけど、そんなわけで『バクマン。』の映画にも距離を置いてきた。

バクマン。』が、過去のトラウマを掘り起こすような作品にならないとすれば、普通の高校生が主人公であるということ。この点で、特撮とか、ストーリー展開とか、キャラの面で心配は少ない。

まして、主演の二人が、佐藤健神木隆之介となれば、実力的には折り紙付き。最初は「え?、サイコーとシュージン、キャスト逆じゃね?」と思ったけれど、この二人はどっちも演じられる実力派、そこは心配なかった。

2時間という標準的な邦画の時間の制約の中で、出会いからコンビ結成、そして新人賞への挑戦、連載開始、学業両立との困難…などをテンポよく描いていたと思う。さすが、大根仁監督、大きなハズしはない。

バクマン。』に関しては僕はけっこうな原作至上主義者なので、ペンネーム設定がないとか、小豆ちゃんとの相思相愛的なエピソードが足りないとか、シュージンの彼女どうしたとか、そもそも家族が全然出てこないのは違和感あるだろとか、蒼木紅先生を出せ(錯乱)とか、まあ言いたいことはたくさんあるけれども
、そんなものはヲタクの戯言だ、メインターゲットは10代から20代の女子だ!という割り切りがなされていると思う(いまやジャンプの読者層自体の女子率が高いという話もあるが、大いに脱線するのでここでは触れない)。

また、キャスティングについて言えば、編集長がリリーフランキーって、それどこの『モテキ』だよとか、大人計画アレすぎだろうとか、染谷将太の変人演技に期待したけどキレ方が物足りないとか、まあ突っ込みどころはそれなりにあったけれども、編集者役の山田孝之が説得力があったというのが一番の印象。

場合によっては続編もあるのかなという含みを持たせた終わり方だったが、『デスノート』のような人気シリーズにまではならないかなという印象。その辺は、やはり普通の高校生を主人公とした作品の弱さだと思う。

終盤で漫画作品のバトルを、作者同士のバトルに擬人化したような描写があったが、割と違和感があって、あくまで作品を生み出すのは自分自身との孤独な戦いではないかと思った次第。映画を作る方も、役を演じる方も、その辺、クリエーターとしてどう感じたのか、というのは聞きたくなった。まあわかりやすさ優先なんだろうけどね。

ということで、全体としては悪くない映画になっているが、原作の持っている「アンチ・ジャンプ」ギリギリのドロドロした面も含めて、すっきりし過ぎということで、点数は<60点>にしたい。