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「天才でごめんなさい―会田誠展」@森美術館

アート

森美術館で開催されている「天才でごめんなさい―会田誠展」を見に行った。

公式サイト:会田誠展:天才でごめんなさい | 森美術館

会田誠が天才かどうかを論じることはしない。だが、「天才でごめんなさい」という不遜な言葉が何らかの引っかかりをもらたすのと同様に、会田誠の作品は鑑賞者の琴線に触れて来る。場合によっては、神経を逆撫ですると言ってもよい。

歴史認識や現代社会に対する問題意識を形にしたような作品もあり。少女を題材に性や死をモチーフに織り込んだ作品もあり。タブーに挑戦するかのような作品も多く、その豊かなアイデアや反骨精神をもって「天才」と呼ぶのであれば、それは確かに「天才」と呼ぶべきなのかもしれないと思わされる。

性的に刺激の強い作品群は会場内で隔離展示されていて、基本的にR18扱となっている。擦れた大人の目で見てみると、R18扱になっている作品群は、もっぱら表現上の理由から隔離されているだけであって、作品が内在する「過激さ」はその他のものと変わらない。いや、むしろ、全体に公開されている作品の方にこそ、インパクトの大きいものがあると言える。

個人的に印象に残ったのは、最後の部屋の作品群。何よりも、いまだに制作中という大作『ジャンブル・オブ・100フラワーズ』のサイズやテーマに圧倒される。だが、個人的にこの作品の少女(実はアンドロイド)は、肌の質感がややどぎついように感じられ、あまり好きにはなれなかった。

一方、スクール水着の少女達が滝で水遊びをする『滝の絵』と、全裸の少女二人が無邪気に山椒魚と戯れる『大山椒魚』の二作品はいつまでも眺めていたいと思わされる作品。特に『滝の絵』の方は、山の頂から流れてくる清水が滝を伝って降りてくるところに、スクール水着とセーラー服の少女を配している、清涼感の高い作品で、個人的には一番惹きつけられた。


(『滝の絵』)

最上部に描かれた山が南アルプスっぽい造形ということもあり、「南アルプス天然水」のCMのコンセプトを思わせ、さらに旧スクール水着とセーラー服という「古き良き昭和」が全面に出されている。しかしながら、それに加えて、西欧近代の絵画へのオマージュをも織り込んでいるところが、この作品を傑作にしている。

まず、この極端な縦長のフレームからして、ラファエル前派の作品の特徴に一致する。中でも、キャンバスを狭しと少女たちが居並ぶ人口密度は、ロンドンのテートブリテンに展示されているバーン・ジョーンズの『黄金の階段』に通じるものがある。


(『黄金の階段』)

また、右下には、テートブリテンの『黄金の階段』と同じ壁面に展示されているジョン・エヴァレット・ミレーの『オフィーリア』と同じポーズで水に浮かんでいる少女がいる。会田誠は意図的にここにミレーの最高傑作のオマージュを置いているのだ。それは若くて美しい少女達もいつかは死んでしまう儚い存在であることの隠喩であろう。


(『オフィーリア』)

今回の展覧会のキービジュアルになっているのもこの『滝の絵』。だが残念なことに、ポストカードより大きなサイズの複製画がなかった。ギフトショップはジグソーパズルが置いてあったけれども、上下をトリミングされたものになっていて、上部では山がカットされていて、下部ではオフィーリアがカットされている。このような作品性を損なう滅茶苦茶な商品化をアーティストはよく許したものだと思うし、そんなものをギフトショップの目玉に据える美術館の方もどうしたものかと思う。実に残念。

ちなみに、「会田誠 平成勧進プロジェクト」と銘打ったサポーター募集企画には、500,000円と15,000円のコースがあった。前者の特典は『考えない人』のフィギュア、後者の特典は『Jumble of 100 Flowers』の一部をクローズアップしたA3プリントということだった。一瞬心を動かされたが、『滝の絵』を鑑賞した後ではやはり肌の質感が気に入らずにスルー。

と、まあ、どうでもいいところで不満はあるものの、現代日本における最重要アーティストの一人である会田誠に関する網羅的な展覧会であることは間違いなく、この機会に鑑賞する価値のあるものだと思う。