夏目漱石の美術世界展@東京藝術大学大学美術館

漱石の小説には古今東西のさまざまな芸術作品が登場する。そんな漱石の文学と芸術を結び付けるという意欲的な展示が藝大美術館で開催されている。

公式サイト:東京新聞:夏目漱石の美術世界展

構成は以下の通り。

I 漱石文学と西洋美術
II 漱石文学と古美術
III 文学作品と美術
IV 漱石と同時代美術
V 親交の画家たち
VI 漱石自筆の作品
VII 装幀と挿画

まず、英国留学時代に鑑賞したであろうターナーやラフェエル前派の作品を鑑賞できるのは貴重な機会。個人的に大好きな画家の一人であるウォーターハウスの「シャロットの女」と「人魚」を見ることができて感激。

また、小説で登場する架空の作品も。『三四郎』の終盤に登場する日本画で、ヒロインの美禰子を原口画伯が描いた「森の女」の推定試作と、『虞美人草』の終盤に登場する酒井抱一作の「虞美人草図屏風」が目玉。

6/15一日限定で「虞美人草図屏風」を原作小説の場面に倣って天地逆に展示する日。この日は、かなり混み合っていた。作品は、原作小説のヒロインである藤尾のプライドの高さを思わせる凛とした空気をもったもの。これが上下逆に置かれることで彼女の不穏な運命を暗示しているということで、漱石の作品世界を堪能するよい機会になった。

最終章の装幀では、橋口五葉によるアールヌーヴォーを彷彿とさせるデザインに加えて、漱石自身の手による『こころ』の装幀を見ることができ、文豪の美意識を垣間見ることができた。

テーマが明確で、内容も盛りだくさん、そして貴重な作品も鑑賞できるということで、漱石好きのみならず、19世紀英国ファンにもおすすめできる展示。藝大美術館というのはなかなか足を運ばないエリアかもしれないが、のんびりと谷根千散歩を兼ねて赴くのがよさそう。

夏目漱石の美術世界展」は7月7日まで。

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(PHOTO:シャープ、CAMERA:Olympus OM-D E-M5 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8)