SFではなく恋愛ファンタジー~『ファーストキス 1ST KISS』(2025年、日本、塚原あゆ子監督)

予告編を観たときは、タイムリープを繰り返してバッドエンドではない分岐を求めるという「ゲーム的世界観」と思っていた。

愛する人を救うために何度もタイムリープを繰り返すという2011年の「シュタインズゲート」や「魔法少女まどかマギカ」みたいな。

だが、観始めてすぐ分かった。

そんなオタク向けSFではない。

そりゃそうだ、あるはずもない。

これは完全な恋愛ファンタジー

タイムリープの設定や考証の粗探しをするのは野暮というもの。

主人公も試行錯誤を極めるという感じではない。

悲壮感はない。

途中からは楽しんでしまっているようにしかみえない。

そう、これは坂元裕二マジック、松たか子マジックに身を委ねるのが正しい。

だよな…あーはいはいと醒め気味に観続けていたら、最後の最後に松村北斗にガツンとやられた。

いやあ、いい俳優だな。

館内満席でほぼカップルで、あちこちから啜り泣きも聞かれた。

これは、確かに大事な誰かと一緒にしっとりと観るのがいい作品。

過去には戻れなくても、身近な人に気遣いを持って関係を改善することはできる…的な。

だよなー、と分かったところで、カップルばかりの劇場に一人でいる自分がいたたまれなくなり、エンドロールの途中で一人劇場を後にした。