ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『DUNE /砂の惑星』を観に行ってきた。
原作は宇宙帝国を舞台にした壮大なスペースオペラで、『スターウォーズ』や『ナウシカ』にも影響を与えたもの。
辺境の砂漠の星で、特殊な力を秘めた主人公が能力に目覚めて、自らの運命に立ち向かっていく。
「映像化不可能」と言われるフランク・ハーバートの豊穣な原作だが、デヴィッド・リンチ監督作品(1984年)を上書きするチャレンジに、ヴィルヌーヴ監督が向かい合った。
結果はどうか。
まずキャスティング、美術、音楽は素晴らしい。
砂の惑星という舞台のスケールの大きさにも全く埋もれないティモシー・シャラメの圧巻のスクリーン映え。
やや線が細いが、王子様感が突出していて、この作品を魅力的なものにしている。
ハードSF系の作品にもかかわらず、彼を目当てに来ていると見える若い女性やカップルも多く、劇場は満席に近かった。
美術は、節々に強く東洋趣味(オリエンタリズム)を感じさせるものの、全体的にはエクゾチックなだけでなく、説得力のあるものになっており、スケールの大きさを感じさせてくれる。
音楽は、ハンス・ジマー得意の重低音や不協和音が効いていて、この惑星の不穏な雰囲気を観客に伝えてくれる。
アート的な観点では作品の完成度が高いと言える。
一方で、エンタメ映画として観ると、やや鑑賞者の期待を裏切るところもある。
まず、世界観やそれぞれの人物及び人間関係について、説明的なシーンが多い。
もちろん、これは初めて『DUNE』に触れる人に対して配慮したものと思われる。
しかしながら、説明はそれほど親切ではない。
内省的な描写が多くテンポもややスロー。『ブレードランナー2049』でも感じたが、なかなか観客の期待するクライマックスにたどりつかず、中盤で少し眠くなるような時間帯もあり、いよいよ面白くなってきたと感じたらあっさり終わってしまう。
これはこの監督のストーリーテリングの個性だと思うが、この相性によって評価が分かれると思う。
もっと短くてテンポが良ければ評価を二分するには至らなかったかもしれないが、2時間半を超えるとなると、この長丁場に付き合えるかどうかという点で、ハードルが高くなってしまっている。
総じて、語り口がやや散文的である点は否めないが、視覚・聴覚などで奥行きのある世界観を感じさせてくれる。
本作の構想は二部作だと言われているが、「きっとこの次はずっと面白いだろう」と期待を引っ張っていると思えば、壮大なサーガの序章として合格点を付けられるのではないか。
主に終盤に出てきたゼンデイヤの神秘的な存在感も強く印象に残っており、次の作品では中核的キャラクターとして活躍するであろうと思うと、期待も膨らむ。