『アラジン』(劇団四季)@四季劇場海

以前、劇団四季には「ファミリーミュージカル」というカテゴリがあった。

少年少女向けのオリジナルの内容で、かつては全国を巡業したりしていたものであるが、現在は、新型コロナの影響もあり事実上なくなっている。

その代わりに、というわけではないだろうが、今の劇団四季にはディスニーとタイアップしたミュージカルが増えた。

ロングランの『ライオン・キング』を筆頭に、『美女と野獣』、『リトル・マーメイド』、そして『アラジン』。

今年の6月には『アナと雪の女王』もレパートリーに加わる予定。

いずれも、ファミリー層や若者に刺さるものであり、ある意味でかつてのファミリーミュージカルという後継的な位置付けになってきているように思う。

僕は
劇団四季では『ライオン・キング』、『美女と野獣』を観たことはあるが、『アラジン』は未見であった。

理由は簡単で、なかなかいい席のチケットが取れなかったから。


今回のコロナ禍で、劇団四季はチケットの払い戻しを行うようになった。

これは感染を抑えるために良いことだと思う。

そして、四季ファンにとっても、直前に良席のチケットを確保できる機会が増えるということになる。

たぶん、今が劇団四季史上、いちばんチケットが取りやすい状況とも言える(良いか悪いかは別にして)。

僕も、今回、一週間前にチケットを探して、前方センターエリアの空席を見つけたので行ってきた。

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客層は、まずは子供連れのファミリー層、そして、20代くらいの若いカップル。

まるで東京ディズニーリゾートみたい。

コアなミュージカルファンみたいな人は存在感が少なめ。

ということで、今の海劇場は、老若男女が楽しめるテーマパークみたいなものだ。

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グッズの充実も凄い。

さて、肝心のミュージカルの中身へ。

主役は、アラジン&ジャスミンのようでいて、ミュージカル的な狂言回しはやっぱりジーニー。

かつての『夢から醒めた夢』の夢の配達人のように、ジーニーは観客に語りかけてくる。

しかも、アドリブめいた小ネタを交えつつ。

観客の笑いや拍手に応じて、ジーニーは演技を変えてくる。

これだよこれ、この舞台と客席の相互作用こそ、演劇の醍醐味だよ。

と、思わず膝を打つ。

ショーは、ダンスあり、歌あり、曲芸ありと、総合芸術の使える全ての手段を用いて見るものに訴えかけてくる。

アラジンの正直さ、ジャスミンの強さ、ジャファーの狡猾さなど、キャラクターのもつ魅力を、俳優の確かな演技と歌唱力が何倍にも膨らませてくれる。

ディズニーのもつ「世界観」「キャラクター」と、劇団四季のもつ「スキル」「チームワーク」の合体。

これこそが、今の日本で楽しめる最高のエンタメではないかと思わずにはいられない。

全てが豪華絢爛。

全てがハイクオリティ。

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厂原アラジンの「憎めない人懐っこさ」、平田ジャスミンの「凛とした強さ」、牧野ジャファーの「王道的なやられ悪役感」、そして瀧山ジーニーの「うざいくらいのノリノリハイテンション」、どれもが劇団四季でしか実現できないもののように思えた。

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これはいろんな人に勧めたいミュージカル。

一人でリピートするよりも、誰かを連れて行って感動を分かち合いたいと思ってしまった。

コロナ時代の今、かつてのファミリーミュジカルの再開は厳しいと思うが、このディズニーミュージカルこそが令和の新たなファミリーミュージカルになったのだろう。

時代への変化への的確な対応だと言える。

これからの劇団四季にますます期待したい。