第10回 しまぁ~ん共和国 本公演 『鬼だけ殺っしアムッ!』@新宿シアターモリエール

島根さだよし(しまぁ~ん共和国)による『鬼だけ殺っしアムッ!』。

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2年前にハコイリ♡ムスメを卒業した小松もかボックスコーポレーション)の初舞台ということで、初日と千秋楽に足を運んできた。

設定はこう。

真っ暗闇の中、男女5人の声が、、、
「何だよこれ!」「誰?」「ここどこ?」「何も見えないんですけど」暫くすると突然部屋の電気がつく、互いの存在に驚く5人、目の前には一人の遺体?いや、記憶を失っている男か女かもわからない人が一人倒れていて驚きは更に倍増、5人には身に覚えのない人、しかも5人がそれぞれ誰一人知らない、ここへ来た経緯も記憶も手荷物も何も無い。
それぞれどうにかその場から抜け出そうとするが扉も窓もなく、その場から抜け出す術もない。ここは一体どこで、何時のいつなのか?・・・謎は深まるばかり、そこへ一つの手がかりになる一通の手紙があった!
それは記憶を失って横たわっている人が握っていた。
その手紙には、「この子は鬼と鬼の間に生まれた子です。名前は雪路と申します、私達には育てる事が困難になりました、どうか、可愛がってあげて下さい、宜しくお願い致します。」と書いてあった。

密室に閉じ込められた5人が来し方を振り返っていく中で、雪路と自分の関係が明らかになり、そこで・・・という展開。

無差別に他人を傷付けるいわゆる「無敵の人」を題材にして、育児放棄、いじめなどの問題を問う社会派作品。

基本的には軽妙なコメディをちりばめつつ、時間を遡りながら場面転換を繰り返し、最後に一気に収束してクライマックスを迎えるというドラマ作り。



俳優陣の見所は、まずなんと言っても、芳本美代子小沢真珠のWヒロイン。

これは20年ぶりの共演ということ。

人間味を滲ませるシリアスな演技で魅せる芳本。

「そこまでやるか」という極限までコメディエンヌ全開で挑む小沢。

「赤鬼対青鬼」とでも言うべきこの二人の掛け合いなくしては成立しない作品だと思わされた。

そして「もう中学生」。

テレビで見るユニークなキャラの雰囲気を醸しつつ、アドリブも果敢に入れて、場内を爆笑の渦に包み込んでいた。

舘野将平、工藤亜耶は、個性の強いキャラクターをコミカルな雰囲気を絶妙にブレンドしながら楽しんで演じているのが手に取るように分かったし、Setsuko、安田ユーシ、伊藤俊彦、池田あやこらのベテラン勢も、独特の空気を作りながら、この舞台に重厚な味わいを加えていた。

最も特筆するべきは、和久井優の演技だろう。

おっとりとした雰囲気の持ち主、と言うイメージがあったが、ここでの役は、むしろ正反対。

不幸な生い立ちを持ち、思春期にトラウマを植え付けられ、施設から義理の両親に引き取られて、「世の中の正義」を信じたくても信じられないという複雑な青年を演じている。

僕らがニュースで通り魔殺人の犯人を見ると「なぜそんなことを」と思うわけだけれども、失うもののない「無敵の人」がどのようにして生まれるのかについて、この作品は雄弁に語りかけてくる。

若手女優陣では、八坂沙織(SUPER☆GiRLS初代リーダー)、小松もか(ハコイリ♡ムスメ初代リーダー)、真野未華、佐久間采那らが、それぞれの個性を持って舞台で輝きを放っていた。

今回が初舞台となる最年少の小松もかは、「体当たり」とも言えるハイテンションでコミカルな演技、ダンスパートでのキレッキレのパフォーマンスで、確かな存在感を示していた。


小松の場合は、ハコイリ♡ムスメ時代から、飾らない独特のキャラクターが魅力だったけれども、千秋楽でいきなり振られたと思われる挨拶でも、癒されるような空気を醸す独特の雰囲気で会場を魅了した。

「癒しと安らぎとトキメキ」というアイドル時代の姿勢はそのままに、活動のフィールドを映画、テレビから今回舞台にまで広げたわけで、今後の活躍が嘱望される女優だと言える。


千穐楽は、初演と比べるとアドリブも多めで、客席の反応も良く、僕自身も何度も爆笑させられた。

初見では気づかなかった伏線を見つけるのも楽しく、再度鑑賞しても楽しい、いや、再度鑑賞してこそ、全貌が味わえる。そんな発見があった。DVDの発売も決定。またじっくり観たい。


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終演後には、パンフレット、ブロマイド、ランダム缶バッジを購入。

お見送り会で小松もかさんにじっくり感想も伝えられた。

いい舞台だった。

(出演者)

小沢真珠芳本美代子
もう中学生
舘野将平
八坂沙織
和久井優
小松もか
真野未華
佐久間采那
池田あやこ
Setsuko
工藤亜耶
安田ユーシ
伊藤俊彦
島根さだよし
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