映画『美女と野獣』(ビル・コンドン監督)

見に行こう行こうと思っていた『美女と野獣」。 

満席状態が続いていてなかなか機会がなく、ようやく行けた。

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結論から言えば、ミュージカル映画として高い完成度の作品。

原作に忠実ながら、新しいセンスを随所に吹き込み古さを感じさせない。

オープニングから第1幕のエンディング、グランドフィナーレまで美しい美術と圧倒的なミュージカル音楽で魅了し続けた。

特に第2幕は、感動的な場面の連続で涙が絶えなかった。

たとえ評価の高い原作があっても実写化に失敗する作品があることを思えば、ビル・コンドン監督の手腕は大いに評価されるべき。

原作ミュージカル好きの僕の目で見ても、歌とダンスはほぼ満点(「ガストン」でジョッキをぶつけ合う振り付けがあったら満点)。

中でも、エマ・ワトソンのベルは、ゴシックな美術の中での存在感は半端ない。クリス・コロンバス監督の「初期ハリーポッター作品」の中で輝いていた彼女の姿をそのまま大人にしたかのような美しさ。


もう一つ挙げておきたいのは、ビル・コンドン監督によるLGBT的な視点。

世間の常識に囚われないベルはもちろんだが、ガストンに従うル・フウの「愛」にも説得力があった。

そして、物語の中で女装させられて思わず喜びを感じてしまった男性にも「自分を解き放て」というメッセージが。

同性愛?として話題になった『アナ雪』を軽々と超えるLGBT度。



現在のディズニー映画は「ヒロインは王子様と結ばれて幸せに暮らしました」という20世紀的な価値観からどんどん自由になっている。

今回の『美女と野獣』でも、「世間がどう思おうとも、自分の守りたい価値観を絶対に捨てない」というメッセージ性が強固。身分はもちろん外見も性別も種族も超えて行きそうな勢い。

こう書くと、ポリティカル・コレクトネスへの複雑な思いを抱く人もいるかもしれない。

だが、ミュージカル映画として見ても文句なしの傑作。音楽と芝居を愛する人には先入観なく見て欲しい作品だと思った。いまさらだけど。