庵野秀明が、新劇場版ヱヴァンゲリオンの制作を中断して作り上げた実写作品の「シン・ゴジラ」を観に行った。
(以下ネタバレ)
圧倒的に強大な未知なる力とそれに立ち向かう組織の無力さ…というエヴァに連なる作品。
極め付けは日本の政府に対する冷ややかな目線。
これは庵野がエヴァで書き続けてきた「父性への反抗」そのものだし、権威の象徴とも言える総理大臣がゴジラに殺されてから主人公がイニシャティブを取るあたり、エディプスコンプレックスの発露として分かりすぎるくらい分かる。
全体としては「ロボットもの」という枠組みを離れてはいるものの、陸空海の自衛隊の兵器が出まくるし、最後はエヴァの「ヤシマ作戦」のセルフオマージュのような「ヤシオリ作戦」でゴジラの凍結させるのがクライマックス。
新劇場版の「序」を思わせるエンディングだった。
だが、ゴジラはあくまで一時活動停止をしているに過ぎない。
これは裏返せば、作品が興業的にヒットすれば必然的に続編が生まれるということ。
続編を作るとなれば、それはヱヴァの完結が遠のくことを意味する。
それでいいのか?ヱヴァのファン?!
(え?僕? 僕は「Q」から作り直して欲しい派です(笑))
主要人物の心の在り方が世界のありようを決めるということで「セカイ系」と言われていたエヴァだが、今回の「ゴジラ」は人物描写、政治描写も、それなりのリアリティがあり、庵野監督の円熟を感じさせる。
碇シンジこそ出ないものの、ヒーロー/ヒロインを魅力的に描いていて、ヒューマンドラマとしては佳作。
あ、もちろん特撮映画としては傑作。電車が無人爆弾として使われる場面とか最高だった。