ピーター・ジャクソン監督による『ホビット』シリーズの最終作。
劇場公開版に未公開シーン役20分を追加したエクステッド・エディション(164分)を視聴。
公式サイト:映画『ホビット 決戦のゆくえ』公式サイト
前作『ホビット 竜に奪われた王国』のクライマックスが、まさかのドラゴン(スマウグ)との対決直前で終わってしまったので、その続きから。
冒頭の早い段階でスマウグが倒されるが、今回のストーリーのメインはむしろドラゴンが守っていた金銀財宝をめぐって、さまざまな勢力が争うというところが見どころ。
そして、そのバトルがしっかりと丁寧に描かれる。
原作者のJ・R・R・トールキンは、『ホビット』を書いてから『指輪物語』を世に出すまでに18年の歳月をかけているが、今回の映画は、両者の連関をよりはっきりと見せるような作品に仕上がっている。
『ホビット』の原作が軽めの児童文学である一方、『指輪物語』の原作の方は大人向けのファンタジーになっていて、ボリュームも後者の方が圧倒的に多いのだが、映画にするにあたり、ピーター・ジャクソン監督は両方を「3部作」として仕立てた。
原作の時系列的には以下の通り。
- 『ホビット 思いがけない冒険』(2012年)
- 『ホビット 竜に奪われた王国』(2013年)
- 『ホビット 決戦のゆくえ』(2014年)
- 『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』(2001年)
- 『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』(2002年)
- 『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(2003年)
製作・公開された順に並べると、「4→5→6→1→2→3」となる。これは、ジョージ・ルーカス監督による『スターウォーズ』シリーズの構成と同じだ(『スターウォーズ』の方は、監督を変えて「7→8→9」が作られる途上ではあるが)。
こうして並べると明らかになる通り、今回の『ホビット 決戦のゆくえ』は、次の3部作に繋がる「伏線」的な、あるいは「橋渡し」的な役割をも果たしている。
それは、ちょうど『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』と同じように。
ということで、この作品は『ホビット』の完結編であると同時に、『ロード・オブ・ザ・リング』のオープニングにスムーズにつながるような描写が多く見られる。ときにやや説明的に感じられるくらいに。
『ホビット』の映画が3部作になると聞いたときに、原作のボリュームの割に長すぎるのではないと訝しんだわけだけれども、そういう役割を担うのであれば違和感はない。
そして、この3作目は期待以上にその役割を果たしている。
ホビットのビルボ・バギンスと魔法使いのガンダルフの友情、エルフのエルロンドやガラドリエルと魔法使いサルマンの関係、そして冥王サウロン…
『ロード・オブ・ザ・リング』の世界につながっていく主要人物が、ファンにはうれしい伏線とともに紹介される。こういうところをないがしろにしない製作は、自身が作品のファンであるピーター・ジャクソンならではだろう。
ということで、時間がやや長いというのは賛否両論かもしれないが、エクステッド・エディションというのは、作品世界にどっぷりと浸りたい人が見るわけだから、それでいい。期待通り、どっぷりと浸ることができる傑作だと言える。<85点>