興行的には失敗作だが―『女王陛下の007』

007映画の6作目では、ボンド役がショーン・コネリーからジョージ・レーゼンビーに交代。さて、その成果はいかに。

007/ドクター・ノオ 全世界興行収入5960万ドル(うち全米1606万ドル)
007/ロシアより愛をこめて 7890万ドル(2479万ドル)
007/ゴールドフィンガー 1億2490万ドル(5108万ドル)
007/サンダーボール作戦 1億4120万ドル(6359万ドル)
007は二度死ぬ 1億1160万ドル(4308万ドル)
女王陛下の007 8740万ドル(2277万ドル)
007/ダイヤモンドは永遠に 1億1600万ドル(4381万ドル)

決してインフレの影響を無視できない時代だが、厳密な比較ではないのであえて無視。『女王陛下』での興行収入は1億ドル割れ、しかも大票田の全米で半減という壊滅的な成績。

商業的には明らかな失敗作である。もっとも興行収入と作品のクオリティは比例せず、最近は作品として再評価する気運もあるらしい。

作品的には、前作までのコネリー・ボンドの荒唐無稽っぷりがコメディの領域に入っていたのに対して、実に正統派だと思う。ジョージの演技力はまだまだだが、彼のスタイルの良さはエージェントとして説得力を持っているし、アクションシーンでもカメラ映えも良い。

特に、雪山でのアクションは特筆すべきレベル。CGなどない時代に、絶壁をジャンプしてパラシュート降下するシーンや、大きな雪崩を交わしてスキーで駆け抜けるシーンは、現在の水準でも十分にスリリング。

キャラクター的には、決して凄みはないものの、クールでクレバー、もっと言えば、どこか誠実さを感じさせるボンドである。

結果的には、レーゼンビーのボンドはこれが最初で最後となった。次の作品でショーン・コネリーが復活し、興行収入も盛り返すのだから、マーケットの求めているものは明確であった。

個人的にはレーゼンビー版のボンドをもう何作か観てみたかった。というのは、この作品のラストシーンがあまり好きではないからだ。報復の連鎖を示唆するような『ゴッドファーザー』的な展開は007には似合わないと思う。そう言いはじめると『慰めの報酬』もそうなのかもしれないが。

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