映画の方ではなくて原作小説の方の『桐島、部活やめるってよ』。
青春群像劇。でもそう言い切るのはどうかと思われるくらい、ストーリーらしいストーリーがない。思いだけは爆発しそうなくらいあるのに。言葉だけは空回りしそうなくらいにあるのに。ただただ、ドラマチックな出来事だけがない。まあ、それが普通の青春というものかもしれない。
だから、もうちょっとだけでも、背筋を伸ばして走ろうよ。
世界はこんなに広いんだから。
何ということはないこんな言葉から、僕は自分の青春時代を思い出す。朝井リョウの瑞々しい文体に惹かれるのは、自分が失ってしまったものの価値が痛いくらいに分かっているからなのかもしれない。そう、この本を読むことは、自分の失ったものを知るということだ。
もう若くないと思っている人にこそお勧めかもしれない。さて、次は映画の方を見よう。