「英BBC、山本さん死亡異例の扱いで報じる」という報道

ジャーナリストの山本美香さんがシリアで亡くなった。

【ロンドン=共同】英BBC放送は21日、ジャーナリストの山本美香さんがシリアで死亡したことについて、ニュース番組で2分以上の時間を割いて報道した。英国人や英メディアの記者以外では異例の扱い。山本さんの父親や、行動を共にしていたジャーナリストの佐藤和孝さんの様子も放映。BBCは「山本さんはイラクやアフガニスタンの紛争地帯も取材し、何度も命の危険を冒した記者だった」と死を悼んだ。

共同通信の記事では、BBCが彼女の死亡を2分以上割いて報道したことを「英国人や英メディアの記者以外では異例の扱い」だと書いている。

この「異例」という発想自体が、日本のマスコミのダメなところをよく表している。世界で最も危険な地域の真実を伝え続けてきたジャーナリストが、まさに危険な政権の銃弾によって亡くなった。これは権力による言論弾圧そのものだ。こうしたジャーナリストの死を報じることの何が「異例」なのか。マスコミとは、本来、世界の真実を伝えることが役目である。他国のニュース番組の様子を伝えることではない。

イギリス人でないのに異例、とか、イギリスのメディアでないのに異例とか、そんな発想ならなおさらダメだ。世界レベルのジャーナリストに国籍など関係ない。この記事を書いた共同通信の記者は、異国の地にいながらどういう視点で世界を見ているのだろうか。そして、日本に何を伝えようとしているのだろうか。

国連監視団さえ撤退する現在のシリア。そのシリアで行われている実に酷い権力の横暴。そのことを私たちが知ることができるのは、命をかけても真実を伝えようという使命感に満ちたジャーナリストのおかげだ。安全地帯にいながら「異例の扱い」などと焦点のぼけた記事を書いている人のおかげではない。そのことを忘れてはならないと思う。