完全なる補完―『機動戦士ガンダム THE ORIGIN(23)』

1979年放送開始『機動戦士ガンダム』は、視聴率低迷のため、全52話の予定が全43話に短縮されて打ち切りとなった。短縮により消化不良となった部分や、十分に描かれなかった背景は、ファンの想像で補完され続けてきた。

『THE ORIGIN』は、安彦良和というガンダムの作り手にいた当事者による補完だ。その点では「正統なる補完」であり、今回完結したことで「完全なる補完」になった。原作では十分に説明されなかったシャアとセイラの過去を丹念に描写していくパートは、まさにガンダムファンが知りたいと望んでいた世界だった。また、モビルスーツのバトルという要素を決してないがしろにしない一方で、連邦サイドの官僚的な体質やジオンサイドの肉親間の対立を読み応えのあるドラマとして描いていて「大人の作品」に仕上がっている。

今回、最終巻となる23巻が出た。内容は、アムロとシャアの一騎打ちというまさにクライマックス。ストーリーの大筋はここまでTV版の原作に忠実に進んできたが、エンディングでは独自の解釈を望む声もあったとか。冨野監督による小説で全く異なる結末になったことを思えば、安彦先生が自身の世界観を打ち出すことに違和感はない。

ということで、どういう結末になったかは、あえてここでは記さずにおく。が、最後の20ページくらいは、読みながら涙が止まらなかった。ガンダムファンであれば、このエンディングは大いに納得できるものであり、きっと満足を得られるものだと思う。

安彦良和先生、本当にお疲れさまでした。素晴らしい『THE ORIGIN』をありがとうございました。

以下は蛇足。これをアニメ化するとかいう話もあるが…声優とかどうするんだろう。まあ、みゆきちが峰不二子をあれほど見事に演じてしまうくらいだから、実力のある人を見つければ大丈夫、かもしれない。