機動戦士ガンダム THE ORIGIN I「青い瞳のキャスバル」

新宿ピカデリーで「機動戦士ガンダム THE ORIGIN I~青い瞳のキャスバル」を観た。

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いわゆるファーストガンダム安彦良和が再構築してコミックした「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」が原作になっているが、映画の方はジオン側に焦点を当てて作られている。

第一作となる「青い瞳のキャスバル」は、ジオンとザビと連邦をめぐる政治紛争に翻弄される幼いキャスバルアルテイシアを描いたもの。

まだこの作品ではシャアはシャアになっていないのだが、「覚醒」、SEEDでいう「種割れ」のようなシーンもあり、そこが映画のクライマックスになっているものの、どちらかといえば、若き日のザビ家の面々や、ランバラルやハモンの若い頃を描いたヒューマンドラマになっている。

特に、ザビ家で安彦氏が肩入れしていると思われるキシリアやドズルの描き方が相当に魅力的。キシリアに至っては、「サービスショット」まであるという力の入れ具合。

ランバラルとハモンのストーリーは、コミックの「THE ORIGIN」の通りであるが、ハモンが酒場で働くのは表の顔で、裏の顔は…というあたりがいかにも安彦氏好み。ハモンの声優はいまや峰不二子も当てる沢城みゆきだが、こういう女性を演じさせたら今一番かもしれない。

キャスバルアルテイシアはまだ幼い面立ちながら、キシリアと対峙する場面ではキャスバルは威厳のあるところを見せてくれるし、ランバラルに抱きかかえられるアルテイシアは、どこからどう見ても無垢なロリータで、どう見てもおっさんホイホイ

作品としてじゃ、安彦良和の描くヒューマンドラマが中心であるが、冒頭のシャア専用ザクの戦闘シーンが登場したり、クライマックスでは連邦のガンタンクも活躍する。

この場面のCGが初代ガンダム世代に違和感を生んでいるようだが、「マクロスF」のバトルシーンのようなスピーディでスムーズなアクションは僕にはたまらなくうれしかった。

「ヱヴァンゲリオン新劇場版」や劇場版「機動戦士Zガンダム」などのリメイクを見慣れた目には全く違和感なく、これを「CGガー」とかいうのはお門違いだと思うし、むしろ安彦良和のヒューマンドラマからすると、メカのバトルシーンなんて、あんなものは飾りですよ偉い人にはそれが分からんのです、とも言いたくなる。郷愁に引かれる人には隕石でも落とすか…などという不謹慎な発言はこの辺にしておこう。

ともかく、ランバラルがいい男で、ハモンがいい女でそれ以上何がいる?というような作品。ヒューマンドラマがメインで、政治色はあっても思想色がないというのが冨野ガンダムとの違い。

少年時代にファーストガンダムの洗礼を受けた世代もいまや当時のランバ・ラルくらいの年齢にはなっているだろうから、彼がアルテイシアを抱きかかえた感触を想像しつつ、ニヤニヤしながら観るのもまた一興かと思う(そんなことはないか)。

蛇足ながら個人的にはCGには違和感を抱かなかった一方で、音楽には違和感を感じる場面もあった。冨野監督とは異なり、シリアス一辺倒ではない安彦良和流の演出ゆえだと思うが、ときにドラマを軽くするところがあったと思う。