世界で最初のタイムトラベラー?ー『タイムマシン』

シュタインズゲートに感銘を受けてにわかタイムマシン厨となったので、いまや古典の領分に属するH・G・ウェルズの『タイムマシン』を読んだ。以下ネタバレ。

といっても、この本は、小学生の頃に読んでいるか、大人になっても読まないか、普通はどちらかだろうと思う。だが、僕のように、いまさらいい大人になってから読む人も中にはいるかもしれない。ということで、一応、以下ネタバレ。

この作品には、タイムマシンものの定番の要素がすべてが揃っている。天才科学者。4次元時空理論。レバーによって過去にも未来にも行けるマシン。そして、ディストピア。つまり、バラ色でない未来。

そう。ここでは、本書が書かれた19世紀こそが人類が最も進歩した時代とされている。そしてその後は人類は遙かな年月を経て、激しい階級闘争の末、二分されてしまう。地下に住まう野蛮な種族であるモーロックと、地上に住まう可憐な種族であるエロイとに。エロイは地上では優雅な生活を送っているように見えるが、実は、モーロックの食用となる家畜のような存在に堕ちている。まるで『マトリックス』のようだ。

さて、話を戻そう。『タイムマシン』にはタイムマシンものの定番の要素がすべて揃っている。ディストピア。壮大な時間を越えた恋。壮大な時間を越えた戦い。失われるタイムマシン。元の世界に戻れないかもしれないというサスペンス。

時をかける少女』も『戦国自衛隊』も『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も『シュタインズゲート』も、全てはここから始まったのだ。ここにはすべてがある。しいて言えば、タイムパラドックスについては言及がない。この点は、H・G・ウェルズの後継者が切り拓いていった地平ということになる。過去を修正するとか、修正しないように気をつけるとか。だが、その要素がないとしても、この『タイムマシン』は十分にスリリングで、センス・オブ・ワンダーにあふれ、読後にいろいろなことを考えさせてくれる。

最後に、この作品のスタイリッシュなところを一つあげておこう。主人公が”TT”。これは人物の名前のイニシャルではなく、"Time Traveler"の頭文字である。AUDIよりもずっと早かったんだな。

タイムマシン (角川文庫)

タイムマシン (角川文庫)