繰り返す、わずかな可能性を求めて―『ALL YOU NEED IS KILL』

桜坂洋の『ALL YOU NEED IS KILL』を読んだ。

「出撃なんて、実力試験みたいなもんじゃない?」敵弾が体を貫いた瞬間、キリヤ・ケイジは出撃前日に戻っていた。トーキョーのはるか南方、コトイウシと呼ばれる島の激戦区。寄せ集め部隊は敗北必至の激戦を繰り返す。出撃。戦死。出撃。戦死―死すら日常になる毎日。ループが百五十八回を数えたとき、煙たなびく戦場でケイジはひとりの女性と再会する…。期待の新鋭が放つ、切なく不思議なSFアクション。はたして、絶望的な戦況を覆し、まだ見ぬ明日へ脱出することはできるのか。

以下ネタバレ。

158回目のループでケイジが出会うのは、同じようにループを繰り返している女性。彼女はループを脱出して未来へ進む方法を知っている。そして、そのループ脱出の条件を満たすには、彼ら二人が同時には生き残ってはいけない…

と、まあ典型的な「ゲーム的リアリズム」作品。『魔法少女まどか☆マギカ』の設定とも通じるところ大。繰り返す、繰り返す。わずかな可能性を求めて。そして、心を通わせた二人が同時に明日を迎えることはできないという切なさ。

ちなみに、『ALL YOU NEED IS KILL』はワーナー・ブラザーズが映画化を発表している。ついにゲーム的リアリズムがハリウッド進出か。胸熱。

All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)

All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)