最後に根を下ろすのか―『The American』

最高の友さ。無口だからいい。俺と同じで―根がない。
(『LEON』リュック・ベッソン

ずっと根がなかったレオンの生活は、マチルダと係わりを持つことになってから変わり始めた。それが良いことなのか悪いことなのかは分からない。だが、彼の友の観葉植物は、マチルダのおかげで大地に根を下ろすことになるのだ。

さて、同じく孤独な殺し屋をジョージ・クルーニーが演じる『The American』。日本では『ラスト・ターゲット』の邦題で今夏公開予定。

スウェーデンで仕事を終えた殺し屋ジャック(クルーニー)は、最後の仕事としてイタリアの小さな村へとやってくる。カメラマンとして生活しながら村の神父ベネデットや美しい女性カルラと交流するジャックだったが、やがて彼の命が狙う殺し屋が村に現れ……。

イタリアとアメリカが交錯するこの作品は、『レオン』よりも『ゴッドファーザー』の重厚な雰囲気を思い出させる。殺し屋を取り巻く冷徹な論理も、マフィアの掟を思い出させるものだ。ストーリーは冒頭から一貫して暗く、最後もハッピーエンドと呼べるかどうか微妙なところだ。ジャックは根を下ろせるのか…

監督は本作品が2作目となるアントン・コービン。元々はロックフォトグラファーで、U2デヴィッド・ボウイビョークらを撮影してきた。映画監督デビュー作は、若くして自殺したイアン・カーティスの生涯を描いたドラマ『コントロール』。監督第1作目にして第60回カンヌ国際映画祭カメラ・ドールや英国インディペンデント映画賞等を受賞。

『The American』というタイトルにもかかわらず、アメリカ的なマッチョさを誇示する場面も、派手なアクションの場面もほとんどない。ひたすらにストイックに、精密に、そして冷酷にストーリーは進行していく。この辺の落ち着いた雰囲気は欧州ならでは。フォトグラファー出身のコービン監督の美学が、この作品の個性を決定付けているのだろう。

主役のジョージ・クルーニーについては、普段の軽妙さを押し隠した寡黙なキャラクターを演じていて、まるでゴルゴ13のよう。アメリカでは「サムライのよう」と評価されているらしい。これはこれで新境地なんだろうが、それでも「渋い」とか「セクシー」といういつもながらの評価に落ち着きそうだ。なんだか面白くない。