『BABY BABY』は甘くて酸っぱくてちょっと苦い

写真集『BABY BABY』は、写真家が一人の少女を4年間撮り続けた作品で、第10回新風舎平間至写真賞 大賞受賞作。

BABY BABY

BABY BABY

フォトグラファーの川島小鳥さん*1は、あの沼田元氣氏に師事していて、少女を見守る視線にも師匠に通じる温かみを感じた。被写体の少女も「ちょっと距離を置いて見守る」のに相応しく、清楚で内省的な雰囲気にあふれている。

この写真集が凄いのは、撮る側の「想い」と撮られる側の「想い」を感じられることだ。ここには商業主義のかけらもないし、おそらくは自己顕示欲すらもない。「相手に向かう気持ちが、結果として写真として残った」と受け止められる。

写真家も技巧に走ることなく真摯に少女に対峙し、少女も「モデル」として背伸びせずに等身大で写真家を見ている。二人の関係が近づきもせず、遠ざかりもせずに、こうした撮影を4年間に亘って行えたというのは、素晴らしい奇跡のように思える。彼らのような多感期をとっくの昔に通り過ぎてしまった僕には、この写真集は、甘くて酸っぱくてそしてちょっと苦いんだ。

最近あちこちで見かける女性ポートレートは、テクニックに走っていたり、機材の性能をひけらかすようであったり、はたまた流行のトイカメラ風であったりで、この『BABY BABY』のようにひたむきな「想い」を感じさせてくれる写真に出会う機会は本当に少ない。

巻末にある沼田元氣氏の解説も、師匠としてという以上の「思い」がこめられていて、実に心を打たれる。というか、ヌマ伯父さんの解説をじっくりと読んでからこの写真集を見ると、感動もまたひとしお、というべきか。正直に言うと、本当に泣きそうになった。

個人的には、早くも2007年のベスト写真集になる予感。というか、こんなに感動できる少女写真集は、他にないと思う。店頭やAmazonの画像を見て表紙が気に入ったら、「ジャケ買い」しても後悔しないよ、きっと。

*1:僭越ながら「はてな」のキーワード登録をしてしまった…