- 作者: 小川洋子
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 1998/08
- メディア: 文庫
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『薬指の標本』とも通じるような閉塞感、孤独、陶酔等を描いた作品。自称・翻訳家の初老の男性と、ホテル・アイリスに住まう17歳の少女との関係は、一般的には異常だ。だが、その異常な関係を通じて、二人は自分の持つ孤独を埋め合わせている。歪んでいて、奇妙ではあるが、心惹かれあっているのだ。
こう考えていくと何が異常なのかという定義は難しい。ミシェル・フーコーが言うように「異常」という概念自体が作られたものであり、本来は「正常」と「異常」の境界など明確ではないのだろう。