id:SHARP:20060726(シャナは「大きな物語」になるのか?)で予想した通り、シャナの物語は時空を超えたものであることが明らかになった。
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10巻まで読むことによって、先代の「炎髪灼眼の討ち手」の生き様が、現在のシャナとその周囲の登場人物((アラストールやヴィルヘルミナは「人間」ではないので「人物」という表現は正確ではない)の関係にどう影響を与えているのかが分かる。
総じて、このシリーズは良作だと思うが、ここまで読んで気になったことが2点。
まず、「フレイムヘイズ」とか「紅世の徒」とか「存在の力」等の時空を超えた「大きな物語」と、思春期の恋愛や友情といった「日常生活」との間のギャップが大き過ぎて、うまくつながっていない。語り手の視点も両者の間をふらふらと彷徨っている感がある。
もう一つは、登場人物の煩雑さ、設定の分かりにくさだ。この10巻は戦記物なのだが、戦う原因、動機もはっきりしないし、勝敗を分ける要素も分かりにくい。その結果、戦局全体がどうなっているのかもよく分からないままに、主要な登場人物の運命を決めるようなイベントが突然生じたりしていて、なかなかドラマに入っていけない。
「うるさいうるさいうるさい」と叫んで嫉妬心を隠そうとする現在のシャナのツンデレっぷりを微笑ましいと思っているファンにとっては、10巻はむしろ「外伝」のような位置付けであり、それよりも「現在」のドラマを推進していって欲しいと思った。