アンフェアなミステリだが〜『ひぐらしのなく頃に解〜皆殺し編』

ひぐらしのなく頃に解皆殺し編』を終了した。今回のコミケで「祭囃し編」がリリースされるが、いまのところはこれが最新版ということになる。

ようやく、出題編の全貌が見えてきたというところで、感想としては、正統派ミステリとしてはアンフェアだということだ。「正解率1%」という謳い文句だが、「正解にたどり着くための材料がすべて提示されている」という条件をクリアしていないのでは、当然だといわざるを得ない。

(以下ネタバレを含む)

アンフェアな点を列挙すれば、「雛見沢症候群」なる架空の病気、「東京」という名前のリアリティのない秘密組織、「羽入」という超常的存在、そしてタイムリープ、などなど、むしろファンタジーとかSFとかオカルト(怪奇)のカテゴリで語られるものである。

もちろん、作者の竜騎士07の構成力、文章力は魅力的であり、そうしたアンフェアな設定を挙げることにとって、「ひぐらし世界」の価値を貶めるようとは思わない。「皆殺し編」に至っては、過去の作品のセルフパロディ的要素すら垣間見える。だが、それは一方で、「ひぐらし世界」の行き詰まりをも意味する。今度の「祭囃し編」でいったんピリオドを打つというのは、他ならぬ作り手の側が「今が潮時」と見ているからではないか。

コミック化、アニメ化、そしてゲーム機での展開と、いまがマルチメディア展開のピークにある作品ではあるが、それほど長寿にはならないだろう。もちろん、この世界設定では、何度でも別シナリオを作れるわけだが、個人的には、「鬼隠し編」のリナの「嘘だッ!!」や、「綿流し編」の詩音の「くけけけけけけけけけけ…」を上回るような、背筋の凍るインパクトは期待できないように思える。

それでもあえてこう言おう。ひぐらしよ、2006年の夏を涼しくしてくれてありがとう、と。