セカイ系の後継者ハルヒ〜『涼宮ハルヒの動揺』

シリーズ6巻目は短編集。ハルヒよりも、むしろ長門有希朝比奈みくる、そして準レギュラーの鶴屋さんなどがストーリーの中心になっているものが目立つ。各人物ともキャラが立ってきているだけでに、サブストーリーの小編で文庫本が一冊作れてしまうところが、よくもあり、また悪くもあるということだと思う。

涼宮ハルヒの動揺 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの動揺 (角川スニーカー文庫)

個人的には、ハルヒの物語は『消失』で一段落したのだと思わざるを得ない。著者がハルヒの世界観を明らかにすればするほど、ハルヒというのが結局「空虚」であることがあからさまになるだけだ。ハルヒを監視する宇宙人、未来人、超能力者という構図において、ハルヒは何者なのか。創造主ではなさそうだから、ある種の特異点なんだろう。では、そのハルヒと近しい関係にあるキョン(主人公)は何者なのか。

結局、この作品もエヴァの子供達が生み出した「セカイ系の一つ」に過ぎないのではないか。実はキョンがいる、それだけ。ハルヒはキョンの想像の産物に過ぎない。そして、このハルヒ世界は、キョンの夢の中の話なのではないか。