佐々木!佐々木!―『涼宮ハルヒの驚愕(前)』

待望の『涼宮ハルヒの驚愕』。

徹夜してでも(前)(後)の2冊を読み通して感想をいち早くエントリしたい。でも、久しぶりの新刊なんだから一文一文をじっくりと味わうように読みたい。どっちが天使でどっちが悪魔かわからないけど、二つの気持ちが俺の心の中で戦った。どっちが勝ったかって? もちろん、じっくりだ。もう4年も待ったんだから、ここで一分一秒を争う必要はない。

「僕たちが直面している問題は、単純なる存在意義の証明なのかもしれない。誰も彼もが、己のレーゾンデートル、存在証明を確固たる事実にしようと努力しているのかもしれないのさ。宇宙人も未来人も超能力者も関係ない。ただおのおのが、自分たちが確かに存在しており、他の誰かもまた自分自身の存在を認識してくれている、という唯一にしてシンプルな行動理念によって動いているんじゃないかな。」
(『涼宮ハルヒの驚愕(前)』p.281)

佐々木! 佐々木! とにもかくにもこの巻では、佐々木、萌えだ。俺の脳内では、佐々木のセリフは全部みゆきちが読んでいる。つまり、佐々木(CV:沢城みゆき)。これが俺のキャスティングだ。

内容の方は、前作の『涼宮ハルヒの分裂』でαとβに分裂した世界が、この巻でも並行で語られていく。村上春樹の小説の常套手段にも似ているが、完全なパラレルワールド(と思われるもの)が、同時進行で記述されていく。「最終的に両者が統合されるにはどうすればいいのだろう」という疑問を抱かせながら。

βでは佐々木を中心とするグループがハルヒワールドに狂いを生じさせて波乱を生んでいく。一方、これまでの平穏無事なハルヒワールドのように見えるαでも、この巻では重要な鍵を握ると思われる人物が登場する。

しかしながら、この作品の重要な謎は、ほとんど全て(後)に持ち越される。だからといってこの巻が面白くないかというと、そんなことは全くない。丁寧な人物描写、思いがけないストーリー展開、そして緊張感のある見せ場と、長らく待たされた「ハルヒ」の世界がしっかりとここにある。読んでいて興奮させられるのは僕だけではないだろう。

谷川流は、妙な小細工や肩透かしなどは全くせず、読者の期待するポイントを全力で突いてきている。これなら刊行が遅れたのも納得だ。

そして、いとうのいぢの絵は多少変わったような感じがする。やや乱暴に言えば、アニメのキャラクターデザインに近付いたようだ。これを「味わいがなくなった」と見るか、「技巧的になった」と見るかは好み次第だろう。

新刊が出たことで「アニメ3期も見えてきた」という声もあるようだが、どちらかというとこの作品は、TV放送よりも映画向きなんじゃないか。スリルとサスペンス。『涼宮ハルヒの消失』に近い緊迫感がある。あるいは、それ以上の(関係ないけど、『消失』でキョンのケータイのアドレスに「佐々木」が入っていたことを鮮明に覚えているのはなぜだろう)。まあ、かりに映画ではなくてTVシリーズにするのであれば、今までのTV版のハルヒとは全く違った構成にする必要があるだろうな。しかもシリアルテイストの演出で。

映画でもTVでもいい。これは映像で見たい。そして、佐々木には沢城みゆきしかいない。異論は認める。ハルヒ役の平野綾がもし声優に復帰しないのであれば、2代目のハルヒ竹達彩奈で頼む。こちらは異論は認めない。

ということで、あまり感想になっていない気がする。もうちょっとまともなインプレは(後)を読んでからエントリーしたい。

p2*[雑記]これまでの『涼宮ハルヒシリーズ』(原作ラノベ)関連のエントリ

これまでにエントリした『涼宮ハルヒシリーズ』(原作ラノベ)関連のエントリは以下の通り。
なお、アニメその他派生物に関するエントリはここには含めない(とちょっと長門風)。