『村上春樹の隣にはいつも三島由紀夫がいる』(佐藤幹夫)を読んだ。
- 作者: 佐藤幹夫
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2006/03
- メディア: 新書
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著者は、村上春樹の「日本文学はほとんど読んでこなかった」という発言は文字通り受け取れないと主張し、春樹作品がいかに三島作品から影響を受けているかという解読を行っている。
確かに、村上春樹が日本文学を読んでいないわけがない。その手の発言は「イメージ戦略」として受け止めるべきだと思う。
しかし、「隣にはいつも三島由紀夫がいる」とまで限定してしまうのには、反発を禁じえない。もちろん三島作品の影響を全く受けていないとは思わないが、登場人物の名前の類似性などを論拠として挙げる姿勢には疑問を禁じえない。両作家の共通項として括っているものの中には、文学のテーマとして普遍的なものや、偶然の符号と思われるものが多い。
私見では、村上春樹の隣にいるのは、「自殺者」ではないかと思う。もちろん三島その人も自殺者であったわけだが、より個人的な関係にある「自殺者」がいつも隣にいるように感じる。
親しい人に死なれて、なお生きることの意味は何か。村上春樹の執筆動機はここにあると思う。