損害たったの270億円?〜みずほ証券の誤発注問題

またか。

みずほ証券ジェイコム株を誤発注・「1円で61万株」

 東証マザーズ上場のジェイコム株を8日、1円で61万株の売り注文を出した証券会社が、みずほ証券であることが明らかになった。

 同証券は「売買注文を入力する際の誤りにより、関係者に多大な迷惑をかけ、深くおわびします」と誤発注を認めるコメントを発表。「事実関係を確認中で、今後の対応策は東京証券取引所と協議中」としている。
日本経済新聞

電通株の上場の際にUBS証券が行なったミスと同じで、株数と単価を反対に入力してしまったものと思われる。

通常であれば、前日の終値等何らかの基準価格に基づいて「異常な価格」での発注にはガードがかかるはずだが、上場初日で基準となる市場価格が存在しないことに加えて、恐らくは人為的な不注意も重なり、こうした事態になったのだろう。

この件に関して、みずほ証券は自社の損失を270億円と見積もっていて、日経新聞もその金額を報道している。

みずほ証券、新規上場株売買で損失270億円・8日時点

 みずほ証券は8日、東証マザーズに同日新規上場した人材サービスのジェイコム株の売買注文をめぐり、誤って大量の売り注文を出し、同日時点で270億円の損失が発生したと発表した。売り注文は61万株とジェイコムの発行済み株式数(1万4500株)の40倍超の規模。安値で取引が成立した結果、高値で買い戻しを迫られるため、今後、損失はさらに膨らむ可能性がある。注文ミスの余波が懸念され、東京株式市場はほぼ全面安となり、日経平均株価は今年3番目の下げ幅を記録した。

 みずほ証券は、みずほフィナンシャルグループ傘下のみずほコーポレート銀行の子会社。主に機関投資家などと取引をしている。同グループには個人向け中心の新光証券みずほインベスターズ証券がある。みずほ証券は2005年9月末で株主資本が3800億円強ある。この日、会見した福田真社長は「財務や資金繰りに問題はない」と述べた。
日本経済新聞

が、この「みずほ証券ショック」により、東証株価指数(TOPIX)は、前日比で1.87%の下落となった。東証一部の時価総額は約500兆円なので、経済的な影響は10兆円規模に及ぶと受け止めるべきだ。

自社の損失が270億円だとしても、今回のみずほ証券の誤発注は、発行会社であるジェイコムや、他の市場参加者まで含めれば、その数百倍ともなる影響を与えたものである。今回のミスの社会的影響は、「兆円規模」のものであるという認識に基づいて、そうした責任がきちんと追及されるべきではないか。

「損失は270億円」というみずほ証券の発表は、2002年4月に発生したみずほFGのシステムトラブルに際して前田社長が述べた「実害はない」にも通じる、自己本位・自己弁護的なもののように感じられる。

社会的・経済的に影響力の大きい企業になればなるほど、「他人に与えた損害」という観点を忘れてはならないはずだ。