新しい時代が始まった-
いや、あるいは長い時間をかけて、時代が一巡したのかもしれない・・・
矢作萌夏の初めてのソロコンは、アイドルの歴史の一つの節目となるような「事件」だった。
・・・コンサートから1日経っても消えない熱に浮かされてつい結論から書いてしまったが、この日を振り返ろう。
SKE48を卒業した矢作有紀奈を姉に持ち、昨年1月にドラフト会議で指名されてからまだ一年にならない16歳は、正規メンバーへのスピード昇格に続き、初めてのソロコンサートを開催した。
このスピードも弩級なら、いきなりTOKYO DOMO CITY HALLをソールドアウトさせる話題性と人気も超弩級。
僕は運よくアリーナ前方のチケットを手に入れ、胸を高鳴らせて会場に向かった。
ソロアイドルの魅力が爆発した前半
本人よる開演前の「影ナレ」で早くも会場の熱気が高まると、最初はなんとTikTok16連発がスクリーンに映し出される。
”みるきー”こと渡辺美優紀との2ショット、そしてダチョウ倶楽部とのコラボ。
Overtureに続いて登場した矢作萌夏は、純白のマリン風味のセーラー衣装で、大きなカエルに乗って登場。
4匹のカエルダンサーズを従えて、「永遠プレッシャー」でライブスタート。
大きなカエルの上に乗って登場する姿もインパクトが大きいが、そこで歌う最初の曲が「♪私に期待しないで〜」と歌う『永遠プレッシャー』というのも、構成として素晴らしい。
その眩しい姿は、もう完全に「王道アイドル」のそれ。
畳み掛けるように2曲目の「意外にマンゴー」へ。
姉の矢作有紀奈が初選抜として参画した曲であるが、そういう説明的なMCなどは一切なし。
続いて、渡辺麻友ソロデビューシングルの「シンクロときめき」。
ここで、矢作萌夏は用意されたトロッコに乗って笑顔を振りまきながらアリーナの通路を後方に進んでいき、バルコニーへ。
サブステージのようにバルコニーを使ったパフォーマンスを見せると、再びトロッコに乗り込み、反対側の通路で元のステージへ。
この演出で、満員のTOKYO DOME CITY HALLは隅から隅へとテンションが高まる。
観客の視点や声援がただ一点に集まるソロアイドルの輝き。
早着替えでモノトーンワンピースと扇を持って「絶滅黒髪少女」を。
カエルではなく、着物ダンサーズを従えてのパフォーマンスは、表現の幅の広さを感じさせる。
ここでようやく自己紹介。かわいすぎて「すち」という言葉以外の語彙を失う。
スクリーンにはショートフィルム風の動画が映し出される。
「カノジョ」目線で、JK制服姿の矢作萌夏が語りかけてくるというもの。
「好きな服(着て欲しい服)」を語っていく主人公に、「えー」「マニアックだね」などとカメラを見て返す一人芝居。
主人公が、ついカッとなって倒れてしまうという演出まで。
そんな青春を送れていたら・・・という幻想を再現したような動画。これはたまらん。
動画によるコスプレの前フリに続いて、待望の「コスプレ」ブロック。
テニスルックの「ウィンブルドンへ連れて行って」、ナース(特大お注射付き)の「ハート型ウイルス」、ポリスの「ロマンス拳銃」、犬の着ぐるみでの「トイプードルと君の物語」、そしてJK制服による「せっかちなかたつむり」の連続披露。
全部早着替えなんだが、犬の着ぐるみになるところはちょっと時間がかかっていて、しかもその「間」を着替えシーンを舞台裏から生中継するという演出。
いけないものをドキドキしながら見るこちらの心を見透かすように「もう脱がせ過ぎだよ~」とか「ねえ、どこまで見えてる?」と画面に語りかける矢作萌夏。
すち。
歴史をなぞり<物語>を存分に見せた後半
ここで矢作萌夏は一度舞台から引っ込むと、ステージにはショートフィルムの後半が流れる。
再び「カノジョ目線」で、放課後の学校でカラオケに行こう?と主人公を誘う。
「あれ、俺、こんな青春時代送ってたっけ?」と錯覚するようなリアリティある演技力で、「何歌おうかなー」「何歌う」と一人芝居の層がが終わったところで、カバー曲コーナーへ。
ワンピースにデニムジャケットを羽織ったスタイルで「フレンズ」(レベッカ)。
上手い。。
聴かせる。。
単なる「カラオケ」ではなく、楽曲の世界観を完全に自分のものに取り込んで、それを高い表現力で聴かせてくる。
ジャケットを脱ぐと、黄色いポンポンを持った純白バックダンサーズを率いた「センチメンタルジャーニー」(松本伊代)。
サビ前のキメはもちろん「もえはまだ〜16だ〜から〜」。
そして、「冬のオペラグラス」(新田恵利)からの「MajiでKoiする5秒前」(広末涼子)。
まるで、昭和のアイドル史・歌謡史をなぞるようなソロ曲の4連コンボに、当時の「アイドル黄金時代」にタイムスリップしたかのような錯覚を覚えた。
そして、持ち前の歌唱力をさらに披露するバラードへ。
「今回、AKBの楽曲を沢山聴いて、素敵な曲を見つけた」と曲振りをする矢作(っていうことは、今回のソロコン彼女自身が選曲をしていたということで、驚くべきセルフプロデュース力だと思う)。
SDN48西国原礼子の「愛よ 動かないで」を都啓一(SOPHIA)によるピアノ伴奏で。
朗々と歌い上げるようなボーカルで、観客はじっくりと聴き入っていたが、曲が終わると大きな拍手を送った。
今度は、スクリーンにはチームKキャプテンの込山榛香による動画が流れる。
「アイドルのプロ」「チームKに入ってくれてよかった」「謙虚になんてならず自分に自信を持って欲しい」と。
もうすでにエースの風格。
真っ赤な衣装に着替えて来た矢作萌夏は、今度は彼女の好きな渡辺美優紀のナンバーを。
「もえきー(わるきー)」では、再びトロッコとバルコニーを使った演出で終盤に向けて会場を一体とすると「やさしくするよりキスをして」へ。
そして、自身がセンターを務めるカップリング「最強ツインテール」をステージ初披露。
もやは「最強」という言葉しか浮かばない。
次の曲へ、というところで、サプライズで同期の大盛真歩が登場し、姉・矢作有紀奈の手紙を代読。
ここまでの苦労を見守っていた姉によるエピソードの紹介に続いて、「これからも妹の応援をよろしくお願いします。そして、SKE48のこともよろしくお願いします!」と読み上げると、矢作萌夏は少し涙目になり、会場からは大きな拍手が起きた。
そして、「SKE48を卒業した姉に向けて、姉といえばこの曲かな」という曲振りで「約束よ」を熱唱。
続いて、「AKB加入から一年。先輩の足元には及びませんが、これからは未来のAKBを作っていけるように引っ張っていきます」という宣言からの「未来の扉」。
過去から現在へ、現在から未来へ。
AKB48も長い歴史の中で栄枯盛衰を見せているが、矢作萌夏にはそんなAKB48の歴史を「ルネッサンス」することのできる人材であると思われる。
平成の次の時代に、AKB 48グループの歴史を紡ぐ中心にいるべきアイドル。
いや、もしかしたら、アイドルの歴史を紡いでいく存在になるのかもしれない。
そう思わされた。
アンコールは、チームKキャプテンの込山榛香が自ら発動するという凄い事態に。
再びステージに登場した矢作は、「大声ダイヤモンド」を「だいすちだ だいすちだ」とすっかり矢作萌夏ワールドに替えて歌う。
「希望的リフレイン」の後は「#好ちなんだ」(#好きなんだ)、フィナーレに「もえのことがすちだから」(君のことが好きだから)と、満員のTOKYO DOME CITY HALLを「すち」一色に染め上げる。
初の写真集が今夏に刊行されることが発表されて会場が湧き上がる。
また、終演後に、急遽、「お見送り会」が開かれることになったとのアナウンスに観客から歓声が上がる。
こんなに完成度の高いアイドルコンサートを観て、お見送りもあるなんて、実質無銭←
僕にとっては、2回目となる矢作萌夏のステージだったが、この日のソロコンでは期待を軽々と超えて来た。
「逸材」とか「次世代のAKBを担うエース」とかそんな言葉に収まらないアイドルの片鱗を見る思い。
アイドルの流れを変える存在になりそうな予感、というか、確信。
「平成」が終わり新しい元号になる2019年。
アイドルシーンも新しい時代に入るのではないだろうか。矢作萌夏とともに。
僕らは今日歴史的な「事件」に立ちあったのかもしれない。
(セットリスト)
0 Overture
1 永遠プレッシャー/AKB48
2 意外にマンゴー/SKE48
3 シンクロときめき/渡辺麻友
4 絶滅黒髪少女/NMB48
MC
5 ウィンブルドンへ連れて行って/SKE48
6 ハート型ウイルス/AKB48
7 ロマンス拳銃/AKB48
8 トイプードルと君の物語/AKB48
9 せっかちなかたつむり/乃木坂46
MC
10 フレンズ/レベッカ
11 センチメンタル・ジャーニー/松本伊代
12 冬のオペラグラス/新田恵利
13 MajiでKoiする5秒前/広末涼子
MC
14 愛よ 動かないで/SDN48西国原礼子
動画(チームKキャプテン込山榛香)
15 もえきー(わるきー/渡辺美優紀)
16 やさしくするよりキスをして/渡辺美優紀
17 最強ツインテール/AKB48(初披露)
姉・矢作有紀奈(元SKE48)からの手紙(大盛真歩による代読)
18 約束よ/SKE48
19 未来の扉/AKB48
(アンコール)
en1 大声ダイヤモンド/AKB48
en2 希望的リフレイン/AKB48
en3 #好ちなんだ(#好きなんだ/AKB48)
MC
en4 もえのことがすちだから(君のことが好きだから/AKB48)