「創世記」を読む以前に、ガリレオやダーウィンの業績を知ってしまっている僕にとっては、旧約聖書のテキストに寄り添うことはさほど魅力的には思えない。
それでも、「過剰にぺダンティックなほど引き出しから情報を提供していく」ような佐藤優と、「納得できないことがあると梃子でも動かない」ような中村うさぎの対談には、知的な刺激を受けざるを得ない。
本書『聖書を読む』は、好評だった前作『聖書を語る』の続編とも言うべき位置付けであり、今回は「創世記」、「使徒言行録」、「黙示録」を読んで、意見を交わしていく。
二人の会話は容易には噛み合うことなく、なかなか大変だなと思わせる一方で、安易に迎合するような対談と比べたらよっぽど面白い。対談が聖書のテキストをダシにして、どんどん関係のないところに飛躍していくのも、個人的には楽しいと思った。
聖書以外にも、岡崎京子『ヘルタースケルター』や村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』について語られているパートもあり、どちらかと言えば、この二人の個性を通じて、近現代のいろいろな問題が相対的に語られると言うべきか。権力であったり、社会であったり、宗教であったり、ジェンダーであったり。
真面目に聖書研究をしようという人はこれを手に取ることはないかもしれないが、聖書を題材にしていろいろなことを考えるきっかけを与えてくれる本。
- 作者: 佐藤優,中村うさぎ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/02/10
- メディア: 文庫
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