三島由紀夫『命売ります』

三島由紀夫の作品は結構読んだつもりだったけれども、「隠れた怪作小説発見!」というベタな帯に惹かれて、ちくま文庫の『命売ります』を購入。

掲載があの「プレイボーイ」ということで、若いハードボイルドな主人公が、事件に巻き込まれたり、女性と関係を持ったりしていく物語。

冒険譚のようでありながら、主人公は完全に受け身の「巻き込まれ系」で、それでいながら女性にはじゃんじゃんもてまくり、ということで、肩の力を抜いて楽しめる。

このプロットが三島らしい「マーケティング」の成果なのか、編集者のグッドジョブなのかは分からない。

しかしながら、表面的には、あくまでエンタメ作品に徹しているように見えるものの、主人公が常に死を覚悟しているあたり、『葉隠』的な武士道精神も垣間見える。

そして、命を売り物にしつつも、常に「どうやって自分を高く売るか」という点について冷静さを失わないあたり、作者自身の生き様にも重なる。

帯にある「終盤のどんでん返しについては、ネタバレ回避のために詳細は書かないけれども、最後の最後まで楽しめる。

個人的には、村上春樹の小説にもつながるような「現実と幻想の間を行き来する」ような感覚にクラクラした。

命売ります (ちくま文庫)

命売ります (ちくま文庫)