代表作「プリマヴェーラ」「ヴィーナスの誕生」が来ない中でどう見せるんだろうと心配になっていたが、展示スペースに足を踏み入れた瞬間にそれが杞憂だと分かった。
師のフィリッポ・リッピから始まり、ボッティチェリ本人、そして弟子からライバルとなったフィリッピーノ・リッピへと多角的に見せる流れ。
しかも、冒頭から「ラーマ家の東方三博士の礼拝」を惜しげもなく展示。ボッティチェリ本人が鑑賞者を見ているような作品で、一気に親しみが湧く心憎い仕掛け。
ルネサンス期なのでキリスト教を題材に取ったものや、女性を優雅に描いているものが多く、そこにボッティチェリの才能が発揮されたのだということがよく分かる。
個人的に一番印象に残ったのは、「書斎の聖アウグスティヌス」。白とオレンジと水色という色使いと明るいトーンが爽やかなだった。
ボッティチェリの最大のパトロンとなったのは、メディチ家のロレンツォであったが、彼が亡くなったあとのフィレンツェはその反動で華美を批判するような空気に満ちて行く。その中で、ボッティチェリも晩年の作品から優雅さが失われていったが、控えめにいっても残念なことだと思うし、芸術家にとって経済的な基盤と文化的な豊かさがいかに重要かということを思い知らされる。
会場を出ると、ボッティチェリと2ショットが撮れる撮影スペースが。公衆の面前でイケメンと2ショットを撮る勇気はなかったので、とりあえず自分抜きで撮影。
ちなみに、音声ガイドは池田秀一。彼の心地良い声を聴きながらゆっくり鑑賞していたら、なんと2時間経っていた。東京都美術館は、内容の濃い企画展が多くて一目置いているけれど、今回のはひときわいいんじゃないかな。
少し前までは、日本の美術館と言えば、印象派ばっかりという感じがあったけれども、最近はルネサンス期が人気になっている。個人的には、この傾向を歓迎したい。
ボッティチェリ展は4月3日まで。