滝口悠生『死んでいない者』

第154回芥川賞受賞作の滝口悠生『死んでいない者』を読了。

死んだもののお通夜に集まる親類の<生>を第三者視点から描写。死んだものは後付けで秩序立って語られるが、死んでいないものは無秩序で猥雑で混乱している。だが、それこそが<生>の本質なんだろうと思わされる。

一言で言えば読みにくく、人物も、情景も、話の流れも頭の中にすっとは入ってこない。人間なんてそんなに簡単に語れないものなんだろうけれども、それならばカオス的なとりとめのないものをありのままのリアリティをもって記述するのが文学の本質なのかというとそれも違う気がする。

試みとしての新しさみたいなものが評価されての芥川賞かとは思うが、ある意味でこの作品の良さを理解することは容易ではない。「文学賞のための文学」的な匂いを感じるが、個人的にはそんな匂いには関心がない、というか、むしろ好感を持てない要因になる。

ということで、他の人には積極的には勧めにくいなあという種類の作品。

死んでいない者

死んでいない者