最後になってもいいくらいの気持ちで―ドロシー「STARTING OVER」ツアー新潟

ドロシーの全国ツアー初日の仙台公演の日、2時間に及ぶステージで観客を魅了したメンバーは、同じく2時間の特典会を立ちっぱなしでこなし、その後、いつものようにブログを更新し、Twitterで告知を行った。

ブログの更新は日付が変わってから順次UPされたが、最後となった秋元瑠海の更新時刻は翌日午前2時を回っていた。

全国ツアーが無事に始まったことのお礼に加えて、デビューからの3年間を振り返って、ファンやスタッフや家族やドロシーの他のメンバー対して感謝する言葉が並んでいた。

その中で僕が心から感心したのはこのくだりだ。

(前略)
こんな事考えてるなんて思ったら、怒られちゃうかもしれないけど‥

いつかドロシーリトルハッピーとしてライブが出来なくなる、私達の物語が終わる時まで後何回ライブが出来るか誰にも分からない。

そう考えると、寂しくて堪らない。

だからどのステージが最後になってもいいくらいの気持ちでいつも立ってる。
(後略)

ドロシーのステージには、惰性というものがない。「これが最後になってもいい」というくらいの意気込みをいつも感じられる。観る方も「これが最後になってもいい」というくらいの真剣さをもって全力で楽しんでいる。

前置きが長くなった。今日は新潟のライブハウスCLUB RIVERSTでのワンマン。新潟でのワンマンは初めてなのにチケットはソールドアウト。この点から、ドロシーに対する高い期待が伺えるし、いまのドロシーの勢いを象徴していると思う。

出囃子に続いてメンバーが登場。「ストーリー」「ドロシーの世界一周夏物語」は初日の仙台と同じ流れ。

ここでMCが入り、自己紹介に続いて、2度目の新潟だという話から、前回来たのはいつ?という流れに。白戸佳奈から富永美杜に出題され、富永が間違ったところで、高橋麻里が正解を言う。昨日予習した成果だったよう。その後、昨夜お寿司を食べて美味しかった。新潟また来たいと盛り上がる。

MC明けで、「COLD BLUE」「壊れちゃう 崩れちゃう」「My Darling」「STARTING OVER」と、ダークサイドに沈む系のターン。特に、近距離で見る「壊れちゃう 崩れちゃう」の表情の悩ましさは凄い。みんな女優のようだ。

ここからセトリに新しい要素が加わる。「set yourself free」「明日は晴れるよ」「ASIAN STONE」。

「STARTING OVER」でどん底に沈んだところから救い上げるのに「set yourself free」を差し込んでくるというのは絶妙。歌詞にもあるように「きみはきみらしく」という存在の肯定。そこからの「明日は晴れるよ」という流れは最強。「世界で一番大好きなあなたをそっと見てる」という共感。

そこからの「ASIAN STONE」。仙台でも「Life goes on」の位置に「ASIAN STONE」を入れて来たことの意味は、単独ライブ初となるこの新潟の地で、新しい扉を開く決意の表れだろう。さらに上を目指すドロシーは、日本各地でファンを増やしていくことになるのだから。

さて、着替えのためのMC。

まずは、白戸佳奈、富永美杜、秋元瑠海の3人が残り、白戸から「3月と言えば卒業シーズンということで、みんな自分が卒業したいものを発表しましょう」とのお題。富永は「食事のときにみんなに合わせてウーロン茶を頼むのを卒業して、ジュースを頼みたい」、白戸は「飲み物を飲むとき喉が鳴るのを卒業したい」、秋元は「飲み物の話じゃなくて申し訳ないけど、メンバーが話しているときに、なになに?って割って入るのをやめようと思う」と。(この中で、佳奈ちゃんだけは卒業とかできなそうだ(笑))。

ここで着替え終わった高橋麻里と早坂香美が来てMC交代。早坂からは「頭で思っていることをしっかりと整理して伝えられないのを卒業したい」とのことで、高橋に対する尊敬の気持ちを言葉にした。かなり熱い告白という感じだった。最後に高橋が卒業したいものとして、「恥ずかしいんですけど、寝るときにお母さんに布団をかけてもらっている」と衝撃の発言。早坂は一瞬反応に困ったようにも見えたが、直前のレッスンの成果を発揮して、しっかりと頭の中を整理して上手くフォロー。しかし、そんな早坂のフォローはそっちのけで、会場は「麻里ちゃんかわいい!」と大いに盛り上がり。

ここで全メンバーが着替え終わって後半戦スタート。新衣装のアイドル感ははんぱなく、近くで見ると破壊力凄い。

「colorful life」「青い空」「恋をしてるの きっと」という仙台と同じ安定の流れから、このツアー初の「諦めないで」に来たところでライブハウスの熱気が変わった。明らかに熱量が高まり、ステージと観客席が完全に一体になった。

小規模なハコの特性を生かした「nerve」「未来への虹」「恋は走りだした」のモッシュや、コールの盛り上がりは圧倒的だった。仙台のホールワンマンとはまた別の、タイトで熱量のあるステージが目の前に出現した。

この熱量を帯びたまま「2 the sky」から「CLAP!CLAP!CLAP!」へ。手を叩いて、足踏みして、もう大騒ぎ。

騒いで汗だくになったところで、最後の曲として「永遠になれ」。最後にしんみりとして余韻を残すセトリはいいと思う。そして、このドロシーのライブも永遠に続いてほしいくらいだ。

ここでメンバーが退場。会場は「アンコール!」の声に包まれる。

そこからの「14回目のありがとう」。すぐ目の前で歌われる感謝の言葉は、いつもよりもずっと深く胸に刺さり、心の奥に染みこんでいく。観客も固唾を飲んで、じっと聞き入っている。終わって欲しくないこの時間。その終わって欲しくない思いをみんなで共有している瞬間。こっちがありがとうを言いたい気持ち。

最後は「ジャンプ!」。会場内に制限するようなルールのないこの場所で、みんながサビの「ジャンプ!」に合わせて飛ぶ。ドロシーとファンが一つになった瞬間だった。個人的にはここが今日のクライマックス。

メンバーが退場し、会場に「ストーリー」が流れ始める。手拍子やコールが鳴り止まない。CLUB CITTAのダブルアンコールの後のときのように。そこから、自然発生的に、リズムに合わせて「アンコール!アンコール!」の大合唱。

そのアンコールの声に押されるような形でメンバーがステージに現われる。そして、カーテンコールのような格好で横一列に並び、マイクを通さない肉声で「ありがとうございました」のお礼。仙台ではリーダーの白戸が代表して話したが、今日のような全員で声を合わせるのは実にドロシーらしいと思う。これはうれしい。

ということで、今日のドロシーのライブも素晴らしかった。仙台のホールコンサートのフォーマルなドロシーも美しかったが、タイトなライブハウスで至近距離で見るドロシーは眩しくて息が止まりそうだった。

これが最後になってもいいという覚悟が伝わるような迫真のステージでありながら、こじんまりとした会場特有のアットホームな雰囲気もあった。どんなシチュエーションであっても、ドロシーのステージに関しては「がっかりする」ということがない。今夜も例外ではなかった。

秋元の言っていた「最後になってもいいくらいの気持ち」が伝わるようなパフォーマンス。今夜もドロシーに魅せられた。

次の公演は3月23日、盛岡の予定。

(セットリスト)

ストーリー
ドロシーの世界一周夏物語
COLD BLUE
壊れちゃう 崩れちゃう
My Darling
STARTING OVER
set yourself free
明日は晴れるよ
ASIAN STONE
colorful life
青い空
恋をしてるの きっと
諦めないで
nerve
未来への虹
恋は走りだした
2 the sky
CLAP!CLAP!CLAP!
永遠になれ
(アンコール)
14回目のありがとう
ジャンプ!

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(追記)
これは、アーティスト本人には責任のないことだけれど、会場となったCLUB RIVERSTは、ステージは低めで観客席後方からは見にくいのと、重低音の響きがやや遅れてくる感じで、いまのドロシーの魅力を伝えるには、やや難ありな感じだった。特に「恋は走りだした」のときのバスドラが完全にテンポがずれるように聞こえ、ノリにくいところがあった。リズム隊で沸かせる曲だけに、ちょっともったいなかった。